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なし崩しの負担増加を警戒 出口見えない「核のごみ」問題
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日本地質学会学術大会での高橋教授の発表資料。火山活動がないなど地層処分に必要な条件を満たした地域として、浜通りなど3カ所を提示している
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「国の土地になるんだから何を持ってきて捨ててもいい―という意見も将来、出てくるかもしれない。だが、そんなのは筋違いな発想だ」。大熊町から広野町に避難する兼業農家池田光秀(52)は、政府が東京電力福島第1原発周辺の土地の国有化を検討し始めたことをめぐり、そう意見する。
候補地選定法見直し
県内の除染で生じる廃棄物を貯蔵する中間貯蔵施設を福島第1原発がある大熊町に造るのはやむを得ないと考えるが、施設受け入れをきっかけに、なし崩し的に負担が増加することを警戒する。そうした思いの背景にあるのは、国内の原発が抱えた、出口の見えない「核のごみ」問題だ。
「町は核の最終処分場になるのでは」。昨年5月、政府が大熊町民を対象に郡山市で開いた説明会で、会場からそんな質問が出た。
原発の使用済み核燃料を再処理する過程で出る「高レベル放射性廃棄物」。国は地下深くに埋める「地層処分」を行う方針だが、処分場を受け入れる地域が見つからず、候補地選定方法の見直しが進められている。
当時環境相だった細野豪志(42)はこの説明会で、「(中間貯蔵施設のほか)福島第1原発の近くに、何でもかんでも負担を押しつけるわけにはいかない」と、本県に高レベル放射性廃棄物の最終処分場が置かれる可能性を否定した。
世界的な研究拠点に
一方、同9月、堺市で開かれた日本地質学会の学術大会で、地層処分の問題に長年携わる日大文理学部教授の高橋正樹(63)は、高レベル放射性廃棄物の処分に適した安定性の高い地域として、本県の浜通りなど国内3カ所を提示した。その上で高橋は、双葉郡で処分を受け入れるべきと考える。「事故で汚染地域が生まれ、第1原発で溶け落ちた燃料も処分しなくてはならない。状況を逆手に取り、最終処分場を伴う世界的な原子力の研究拠点として生まれ変わらなければ、まさに『見捨てられた土地』になってしまう」と言う。
こうした意見に同調する避難者もいる。横浜市で避難生活を送る双葉町の大塚憲(63)は、「原発立地町は国と運命共同体となって原子力政策を進めてきた。事故からの再生も、原子力によって遂げるしかないんだろう」と悲壮な覚悟を語る。
見通せない中間貯蔵施設設置後の古里の姿。「核のごみ」の受け入れも現実的な選択肢という意見もある中、施設受け入れをめぐる協議を見守る避難者の心は揺れる。(文中敬称略)
(2013年12月4日 福島民友ニュース)
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( 2013年12月4日付・福島民友新聞掲載 )
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