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原発災害・「復興」の影
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「いつか元に戻して」 避難者、“生まれ育った古里”に執着

「いつか元に戻して」 避難者、“生まれ育った古里”に執着

大熊町の自宅の空撮写真を眺める松本さん。「双葉郡の町村合併は避けられない」と指摘する=栃木県鹿沼市

 「例えば『双葉市』になったとしても大熊、双葉という地名は残せる。合併しないまま、福島第1原発が立地する2町だけ切り捨てられてしまうことが怖い」。栃木県鹿沼市に避難する大熊町の松本光清(65)は、除染に必要な中間貯蔵施設建設のため町内の広大な地域の国有化が検討される大熊、双葉2町の将来をめぐり、双葉郡全体の町村合併は避けられないと考える。
 政府が国有化を検討している地域に自宅が含まれることを報道で知り、「もう帰れないのだと、吹っ切れた」。だが、自分が生まれ育った古里が将来どうなってしまうのか―という懸念は、心から離れない。「周辺の地域と絡めて復興につなげないと、地元は立ち行かないだろう」

 「合併議論」避けられず
 双葉郡8町村の合併をめぐっては、大熊町長の渡辺利綱(66)が先月、日本記者クラブで開かれた記者会見で「将来は予測しづらいが、合併も含めて取り組むべきなのかと考えている」と発言。各首長からは「今後、議論は避けられない」との声が上がる一方、避難者の帰属意識が薄れて帰還の意欲が低下することを懸念する意見もある。
 帰還する考えの有無にかかわらず、故郷への強い執着をにじませる避難者は多い。「田んぼ、畑、山。全部先祖から受け継いできたものだから」。会津若松市に避難する大熊町の塚本英一(72)は、町内の復興拠点に復興公営住宅が整備されればすぐに入居し、自分の土地を管理しながら暮らしたい。自宅は、国有化が検討される地域より南側。「しっかり安全対策が講じられるなら、施設が町内にあっても生活に問題はない」との考えだ。
 一方、鹿児島市に避難した双葉町の遠藤昭栄(70)の自宅は第1原発のすぐ近く。帰還は極めて困難だと考え、施設建設を容認するが、「古里ののどかな風景、仲間の笑顔が夢に出てくる。70年近く過ごした古里は、死ぬまで忘れられない」と明かす。

 「国有化」機に踏ん切り
 不透明な施設建設後の古里。国有化を契機に踏ん切りをつけた松本は、子孫が大熊の自宅に戻るかどうかはそれぞれの世代が判断すべきだと思うし、「汚染土壌などは30年以内に県外で最終処分する」などの国の「約束」も信用に足るものとは考えていない。「それでも」。思い悩みながら口にした。「できればいつか、人が住める場所に戻してほしい」(文中敬称略)
「貯蔵する」おわり

(2013年12月7日 福島民友ニュース)



( 2013年12月7日付・福島民友新聞掲載 )
 

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