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原発災害・「復興」の影
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除染遅れ…いら立ち 福島市の7割超「いまだ手付かず」

除染遅れ…いら立ち 福島市の7割超「いまだ手付かず」

福島市で行われている住宅除染。これまでに終えたのは全体の26.9%にとどまる

 「本来なら野外での遊びを生涯で最も楽しむはずの幼いころの数年間が、原発事故で今も奪われ続けている。一体、あと何年待てばいいのか」。4人の子どもを持つ福島市大森の高橋真史子(ましこ)(41)はいら立ちを口にする。
 原発事故から3年近くたつ今も自宅を含む地域の除染が行われない。先行して除染が行われた学校などは唯一安心できるが、自宅周辺では遊ばせていない。長女(7)が4歳ごろに買った自転車はほとんど乗る機会がなく、小学1年になった今も補助輪が外せないままだ。「泥んこ遊びはもう、うちの子たちの年代では無理」。最近、諦めに似た気持ちも芽生え始めた。
 除染は、避難区域など放射線量が高い地域は国が直接担うが、同市などは市町村が除染計画を策定して実施する。市は、線量が比較的高い市東部から着手しており、高橋が住む信夫地区など西部はほぼ「手付かず」。市は約9万5700戸の住宅への除染を2016(平成28)年9月までに完了させる計画だが、1日現在で除染を終えたのは全体の26.9%に当たる約2万5700戸にとどまる。

 2013年の市長選に影響
 除染など復興の遅れに対する市民の心情は、昨年11月の市長選に影響した。新人で元東北地方環境事務所長の小林香(54)が現職候補を2倍以上の大差で破り、新市長に就任。福島民友新聞社が市長選告示直後に行った世論調査では震災、原発事故後の行政の対応、特に除染など復興の遅れが現職候補への不信感に直結していた。
 信夫地区と同様、本格的な除染が始まっていない吉井田地区の自治振興協議会長を務める森口国一(82)は「いまだ手付かずの地域では復興が実感できない。みんな除染に対する不満をぶつけたんだろう」と市長選を分析する。
 除染の遅れは、各地区に設置予定の仮置き場の場所が決まらないことのほか、市が徹底した除染手法を取ってきたことにも起因する。市はこれまで、屋根を除染対象とし、高圧洗浄を実施するなどしてきた。「3年近くたち放射性物質も低減していることを踏まえた手法を検討している。屋根の除染を省略すれば必要日数は短縮できる」。福島市除染企画課長の渡辺俊寿(56)はそう明かす。

 手法の改善にも疑問
 だが、市の仮置き場として私有地を貸し出している同市の住職阿部光裕(50)は、手法を変えるだけの改善策には疑問を抱く。「仮置き場には各地区内の廃棄物しか運ばないという方策を取り続ける限り除染の加速化は難しい」。広範囲から運び入れることも視野に、仮置き場の位置付けを再検討すべきと考える。「市は加速化との掛け声だけ。解決すべき課題はそのままだ」
 市は、信夫地区や吉井田地区などの除染について「14年度以降」と説明してきたが、現時点で14年度当初から始まる予定はない。「開始時期についても十分な説明がない」。住民の気持ちを察して阿部はつぶやく。「さんざん待たされてストレスは相当だろう」(文中敬称略)

(2014年1月30日 福島民友ニュース)



( 2014年1月30日付・福島民友新聞掲載 )
 

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