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減り続ける“帰還希望” 「除染の原資、賠償や生活再建に」
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除染が終わった自宅前で線量を測る荒木さん。庭には新しい砂利が敷かれているが、線量は毎時3〜5マイクロシーベルトある=30日、浪江町井手
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「除染、除染と声を上げてみても、どうせ帰らないのだから」。浪江町から二本松市に避難する農業荒木伸六(83)は昨年12月、環境省のモデル除染が行われた自宅居室を測ってみたところ、空間放射線量が毎時3.5マイクロシーベルトだった。
住める数値ではない
荒木の自宅のある同町井手地区は、多量の放射性物質が飛散した同町津島地区や飯舘村に隣接している。自宅の除染が行われたのは昨年11〜12月。周辺の線量は毎時35マイクロシーベルトから、5〜8マイクロシーベルトに下がったが、「住める数値ではない」と感じた。長女夫婦は既に県北地域で家を探している。
除染はたまたま自宅がモデル除染の対象地区にあったのでやってもらった。「線量がある程度下がるのは分かった。だけど、帰るかどうかは別問題」と荒木は言う。
町への帰還希望は70歳以上で最も高く3割弱。20〜30代では6〜7%。帰還を決めかねている人が3〜4割いるものの、道路や商店、病院などが原発事故前の姿に戻らない限りは「町に帰る選択をする人は少ないだろう」と荒木。町の中でも比較的線量が高いとされる井手地区では、帰還希望はもっと少ないはず―とも思う。環境省が住宅除染は完了したとする川内村でも、完全に帰還したのは事故前の2割弱だ。
「住民の帰還に重要な住宅や生活インフラを優先的に除染する。成果が出ているところもある」。環境省は昨年末、双葉郡を中心とした国直轄除染の計画の改定を発表。環境相の石原伸晃(56)は今年3月末としてきた完了時期を一部町村で先延ばしすることを発表したが、除染の成果は出始めていると強調、帰還につなげたい考えを示した。
復旧のため除染推進
荒木の住んでいた浪江町の町長馬場有(65)も、「除染なくして町の復旧はあり得ない」としており、帰還前提の考えが双葉郡の中でも強い首長の1人だ。県も帰還の前提を崩しておらず、「実際のところ帰還は難しい」と感じ始めている住民との間には温度差が生じつつある。
「人間は働く場所と住む場所があれば落ち着く」。これが荒木の持論だ。荒木には帰還希望者が減り続ける中で、どうして国や県が除染、除染と題目のように唱えるのかが分からない。「こんなことに何兆円も使わなくてもいい。賠償や生活再建に使えばいいのに、大手ゼネコンにどんどん除染の金を流したいのかと疑いたくもなる。そんな政治家を選んだのも自分たちなんだけど」(文中敬称略)
(2014年1月31日 福島民友ニュース)
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( 2014年1月31日付・福島民友新聞掲載 )
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