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“安心の追求”揺れる行政 追加除染、市長選で方針転換
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Cエリアで行われた「ホットスポット除染」の現場。敷地内の線量を測定し、高い部分のみを取り除く=昨年12月、伊達市梁川町
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「Cエリアのフォローアップ除染を行います」。伊達市で1月に行われた市長選。告示を間近に控えた同月上旬。現職の仁志田昇司(69)の発表したマニフェスト(政権公約)が市民や関係者に驚きを広げていた。仁志田はこれまで、地域ごとの放射線量に応じた除染を行う方針を示してきた。Cエリアは市内で比較的、放射線量が低い地域で、線量の高い場所だけを局所的に除染してきたエリアだった。方針転換が、全面除染を訴える新人候補を意識したものであるのは明らかだった。
「市民の要望高まる」
マニフェストは「安心には科学データに加え『心の納得』が必要です。(中略)市民目線に立って、納得のいく除染を実施します」とある。裏を返せば、科学的に意味はないともとれる内容だ。仁志田は告示まで11日と迫った同8日の記者会見で市として追加除染の方針を発表、「市長選立候補予定の新人が徹底除染を訴え、市民の要望が高まった」と説明した。
同市に隣接する福島市では昨年11月、除染推進を前面に押し出す新人が現職に大勝している。新人候補イコール除染推進のイメージができあがれば、仁志田も相当不利な状況に追い込まれるのは必至だった。
現職の公約にため息
「言っちゃったなあ」。伊達市の市政アドバイザーを務める多田順一郎(62)は仁志田のマニフェストをみてため息をついていた。多田は「Cエリアの汚染は健康に影響はなく面的な除染は無意味」と仁志田に進言してきた。被災者の原状回復を求める気持ちは痛いほど分かるが「住民がそろそろ現実的にならないと、全国から愛想を尽かされかねない」との思いがある。
国は除染の費用を東京電力に請求するが、それは電気料金として電気利用者に転嫁される。他の電力会社もその一部を負担する仕組みだ。東電などが費用を支払えなければ、国民が税金として負担することになる。「安心まで求めて多額の費用を費やすのは理解が得られない」と多田は言う。
Cエリアに位置する同市梁川町に住み、3人の子を育てる主婦末永君江(47)は学校行事への参加などをめぐり、対応が親の判断に委ねられるケースが多いことにうんざりしている。末永も線量は低い方がもちろん安心だが、「放射線を気にする親が子どもの活動の足を引っ張るのは嫌」と明かす。行政が除染実施を安心に結び付けられない現状が、住民の除染に対する不信の根を深くしている。(文中敬称略)
(2014年2月4日 福島民友ニュース)
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( 2014年2月4日付・福島民友新聞掲載 )
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