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曖昧な国の除染目標 「年間1ミリシーベルト」あくまで目安
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除染が行われず、自宅の裏山に積もったままの落ち葉を見つめる目黒さん。早期帰村を望むが、村独自の除染目標には疑問を感じている=飯舘村
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「国が『1ミリシーベルト以下を目指す』と言っているのに、村が独自に『5ミリ以下を目指す』と言っても、放射線量が下げられないから妥協しているとしか受け取れない。国の統一的な基準でなければ、従えない」。福島市に避難する飯舘村伊丹沢の目黒正光(70)は、村が独自に設定した除染目標への疑問を隠さない。
村が独自基準を設定
政府は、年間の追加被ばく線量が20ミリシーベルト以上の地域を縮小することと、長期的に年間1ミリシーベルト以下を目指すことを除染の目標としている。一方、村は2011(平成23)年12月、除染目標を独自に「年間5ミリシーベルト以下」に定めた。毎時1マイクロシーベルトに相当する年間の被ばく線量で、除染により比較的早期に達成可能と判断した。
「村で年間1ミリシーベルトを達成するには5年、10年と長い期間が必要。それだけを目標としていては、『避難先で死にたくない』という高齢者の思いに応えられない」。村の担当者は独自に目標を設けた背景を語る。
政府は年間1ミリシーベルトを「放射線防護を効果的に進めるための目安」と位置付けており、達成すべき具体的な目標とは異なる。国はこれまで、住民が許容できる被ばく線量について議論の場を設け、具体的な除染目標を設定することも検討してきたが、専門家の意見がさまざまなことや、新たな数値を示すことで生じる混乱への懸念から、実現していない。
独自目標を村民に説き続ける担当者は言う。「曖昧な目標しか持たない国は、今後も具体的な目標数値は出せないだろう。せめて、1ミリシーベルトが安全と危険との境目を示す基準ではないと、説明を尽くすくらいはしてほしい」
「説明に努力すべき」
国際原子力機関(IAEA)の専門家チームも1月、「1ミリシーベルトが、除染活動のみで短期間に達成しうるものではないと、さらに説明に努力すべき」との政府への助言を公表している。
政府が曖昧なままにしているのは目標だけでない。除染の対象についても同様だ。南相馬市に避難する同村の杉浦光一(64)は、「山も含め全て除染しないと、帰っても農業ができず、生活していけない」と、森林を除染するかどうか決めないまま帰還に向けた計画が進むことへの不満を語る。
一日も早い帰村を望む目黒は、村ではなく国が具体的な除染の目標、範囲を示すべきだと考える。「除染に時間がかかるのは理解できるが、はっきりした目標を示してもらわなければ、帰村できるまで待つのは困難だ」(文中敬称略)
(2014年2月7日 福島民友ニュース)
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( 2014年2月7日付・福島民友新聞掲載 )
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