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原発災害・「復興」の影
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信頼されない「安全」 研究者が集めたデータに“拒否反応”

信頼されない「安全」 研究者が集めたデータに“拒否反応”

個人線量の管理に使われる新型の線量計。時間ごとの線量も表示され、生活実態に応じた被ばく量の把握が可能とされる

 「講演で一番最初に聞かれるのが『原発再稼働に賛成か、反対か』。この答え次第で、発言の信頼度を上げ下げされる。『再稼働反対』と言わないと聞く耳を持ってくれない人もいる」。原発事故後、県内でホールボディーカウンター(WBC)による内部被ばく検査の支援などを続けてきた東大大学院物理学専攻教授の早野龍五(62)は漏らす。

 住民から「御用学者」
 早野は自身がかかわるWBC検査や、ほかの医師や研究者が集めたデータから「事故当初の予想より内部被ばくの値は低い」と説明しているが、数値が低いとの説明に拒否反応を示す人もいる。政府などの意向に沿って事故被害を小さく見せたがる学者とみなされ、「御用学者」ともいわれる。「不安を抱く住民に、データに基づいて被ばくは少ないと説明することは、東京電力の責任を軽くすることではない」と話し、被ばくの多寡の見解と、原発への姿勢が結び付けられていると感じている。
 インターネットには、早野らの見解を批判する「公開質問状」が複数見つかるが、反論していない。「ネットでの反論は、ネガティブな言葉の応酬となる」と早野は言う。

 「グレーゾーンは黒」
 二本松市で市民団体の代表を務める田口茂(63)は、NPO法人主催の研究会で早野の講演を聴き、「放射線のことは全て灰色。灰色だったら黒とみなして施策を進めるべき」と思った。
 早野は、住民一人一人の生活実態に基づいた被ばくを個人線量計は測定できると強調した。国も今、避難解除区域で導入しようとしている。しかし田口は、屋外に8時間いることを前提に空間線量から推計する国の従来の方法よりも被ばくの数値が小さくなり、日々の過ごし方で同じ世帯の中で被ばく量が一人一人変わることも引っ掛かった。
 「確かに(生活実態に即した)個人の線量の方が正しいかもしれない」とも思うが、何か裏があるのではと勘繰ってしまう。「政府は線量管理を空間線量による推計から個人線量に変えることで、住民を分断しようとしているのでは」
 原発事故は安全神話の崩壊とともに、「安全」という言葉の信頼をも奪った。(文中敬称略)

(2014年3月4日 福島民友ニュース)



( 2014年3月4日付・福島民友新聞掲載 )
 

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