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「教育旅行」回復は遠く… “福島”しかない魅力づくり必要
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原発事故後、スキー客や学生のスポーツ合宿が減少している民宿街=猪苗代町
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「スキーのインストラクターを頼まれることはもうないな」。猪苗代スキー場のふもとにある民宿正幸館の平山健一(53)は原発事故後、県外から修学旅行などでスキーに来る学校が減ったと感じている。「ゼッケンを付けて練習する子どもの姿が日常だった。でも今は、それが見えない」
民宿客が3分の1に
猪苗代町の空間線量は測定地点の多くが毎時0.1マイクロシーベルト以下。だが町内の民宿客は震災後、3分の1まで落ち込んだ。スキー客だけでなく、毎年あった学生の夏休み合宿も「半分が県外に移った」と嘆く。
県観光物産交流協会によると、修学旅行や合宿の学校数(小学校―大学)は、2010(平成22)年の7647校から11年は2082校に激減、12年は4042校にとどまる。同協会教育旅行推進課長の野崎和彦(43)は「原発事故でキャンセルした学校の多くが、行き先を長野県に変更した」と打ち明ける。長野県は首都圏からの距離が本県とほぼ同じ。スキー場が多く農業体験学習も盛んで環境が似ている。長野県によると、修学旅行などの学校数(小学校―高校)は10年が3032校、11年は3141校、12年3509校と増加した。野崎は「同じ活動ができるなら福島にこだわる必要がない」と言う。
「教訓」は5年が限度
修学旅行を受け入れる裏磐梯ロイヤルホテルの支配人、森井宣行(48)は修学旅行の特性を明かす。「入学時から計画するため、次の学年も同じ場所を選ぶ傾向がある。毎年来てくれるという魅力がある一方で、一度離れると戻りづらい」
宮城学院女子大教授の大橋智樹(43)=応用心理学=は「風評被害は他地域で代わりがきく地方で起きる。一方、地下鉄サリン事件後に東京で地下鉄に乗らない人が増えなかったのは、地下鉄を避けたら通勤もできず、日本の経済活動に大きな支障が出るから。都市部は代わりがきかない」と指摘した上で、こう続ける。「原発事故の教訓は福島でしか学べないから、旅行誘致のきっかけになる。だが、それも5年程度。その間に農産物のブランド化、独自の体験や観光のメニューをつくり、福島にしかない魅力を打ち出すべきだ」(文中敬称略)
(2014年4月1日 福島民友ニュース)
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( 2014年4月1日付・福島民友新聞掲載 )
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