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健康志向の顧客減少 自主避難で小売業にも客層の変化
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店に健康食品を並べる渡辺さん。顧客層の県外流出で売り上げが減少した=福島市
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原発事故に伴い、中通りなどから県外へと住まいを移した自主避難者は3万人を超えるとされる。放射性物質による健康被害への懸念が強く、健康への関心が高い層が中心とみられている。この層の県外流出は、県内の小売業にも客層の変化という形で微妙な影を落としている。
「髪の毛が赤くなったのも放射能のせいだとか言って避難するなどして、顧客が減ってしまった。自主避難が過剰反応かどうか、私には分からないけど」。福島市中心部の健康食品販売店。店主の渡辺ミサ子(66)は店を見渡しながら言う。「だから、全然売り上げは伸びてないの」
売り上げ6割に低下
渡辺の店内には、無農薬野菜や玄米、無添加調味料、化学物質の使用を極力抑えた“環境にやさしい”洗剤などが並ぶ。開店した30年前は、まだ健康食品の店が珍しく、口づてで客が増えていった。無農薬野菜など生産に手間のかかる食品が多いため、市内のスーパーなどに比べると価格はやや割高だが、「健康への意識が高い」消費者が店を支えていた。
事故後、店の売り上げは徐々に減少。2013(平成25)年は事故前の6割まで落ち込んだ。原発事故で高まった健康への関心から、渡辺の店の売り上げが伸びそうな状況だが、伸びたのは原発問題の講演会などの主催団体からの弁当注文などで、落ち込んだ売り上げは補いきれていない。
回復の兆しは見えず
東京大総合防災情報研究センター特任准教授の関谷直也(38)は「原発事故で、県産農産物を拒否する人が生じたことで流通に変化が生じている」とした上で、「ただ、県産品への拒否反応を示す層は減少しており、全体的な消費は今後、戻ってくるはず」とする。
確かに、県産農産物への拒否反応の薄らぎは直売所の売り上げ回復などに見ることができる。一方で、主な顧客層が県外に出てしまった渡辺の店のようなケースは、回復のきっかけが見えにくいのが現状だ。渡辺は、これまで面倒だと思って敬遠していた東京電力への賠償請求をしてみようと考え始めている。「売り上げが4割下がってるんだから。こういうのは風評被害って言わないのかしらね」(文中敬称略)
(2014年4月3日 福島民友ニュース)
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( 2014年4月3日付・福島民友新聞掲載 )
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