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賠償金で揺れる 家族の亀裂生む危険、相続めぐる問題も
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夜の仮設住宅。賠償金に起因する家族間や親族間の問題が指摘されている
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家族の亀裂生む危険 相続めぐる問題も増加
「原発事故前は真面目に働いて家族思いだった人が避難後、賠償金を得て酒、ギャンブルにはまり、家族に生活費を残さない、といった相談があった」。ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の保護などを担う県女性のための相談支援センター(福島市)の担当者はそう明かす。
同センターには避難者からの相談も多く、事故から3年以上たった今も減らない。家族から暴力を受けるなどとして、女性を仮設住宅から保護したケースもあった。
「ここに相談を寄せる家族は、世帯主が家族の財布を握っているケースが多い」と担当者。賠償金は、精神的損害への賠償など個人単位で計算される金も家族分一括で世帯主に支払われるのが一般的だが、東京電力は「事情があるとして、世帯主ではない家族に支払ったケースはある」と明かす。
「子どもにも大人と同額が支払われる精神的損害への賠償金は、親子関係が正常なら問題とはならない。だが、関係がこじれると、金を管理する親に対し、子どもから『俺の金は何に使ったんだ!』などというセリフが出てしまう」。避難者の心のケアなど支援事業に取り組む福島大大学院人間発達文化研究科教授の生島浩(58)=臨床心理学=は指摘する。
就労意欲の低下に
賠償金が避難者の就労意欲低下につながる例もあり、生島は「働けない、働かない親を仮設住宅の至近距離で見てきた影響は計り知れない」と、子どもへの教育上の悪影響も心配する。
賠償金が引き起こす可能性がある家庭内の不和。一方、宅地や建物に対する賠償が進むにつれ、賠償に当たって東電から遺産分割協議を求められるなど、相続をめぐり親族間で話し合いが行われるケースも増えた。
福島市の仮設で暮らす浪江町の遠藤義雄(73)は、知人から「兄貴が親の世話をしたんだから」と、兄弟が相続をめぐる書類にすんなりハンコを押したと聞き、「まれな話だと感じた」と苦笑する。相続の話はよく聞くが、「『賠償金が出るならハンコ押す代わりになんぼか頂戴(ちょうだい)』というのが『人間の常』だろう」と考える。
今年の相談件数急増
県司法書士会は、毎年2月を相続の相談を受け付ける強化月間としている。同会によると、今年の相談件数は前年比192件増の485件と急増した。会長の高橋文郎(55)は「相続登記をせず放置されたままというのは事故前から多かったが、従来なら慣例で長男が受け継げば良かった。いまは相続手続きに時間がかかるケースが多く、今後は親族間の調停なども増えていくだろう」と予測する。
生島は警鐘を鳴らす。「事故で被害を受けたのだから、賠償金は受け取って当然のお金。ただ金額が大きいだけに、家族間、親族間の『不幸の種』にもなりうる。深刻な事態となる前に、専門家による社会的支援が不可欠だ」(文中敬称略)
(2014年4月27日 福島民友ニュース)
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( 2014年4月27日付・福島民友新聞掲載 )
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