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原発災害・「復興」の影
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直接請求に渋る東電 「迅速な賠償の徹底」は言葉だけか

直接請求に渋る東電 「迅速な賠償の徹底」は言葉だけか

ADRを担う郡山市の原子力損害賠償紛争解決センター福島事務所。直接請求とADRの格差が波紋を広げている

 「補償ご相談」「補償対象期間」。賠償の流れを示す東京電力の資料には「補償」の言葉が並ぶ。「補償という言葉に『個別事情に目を向けたくない』との東電の本音があるんじゃないか」
 元県弁護士会長の浅井嗣夫(66)は、原発事故に伴う損害の直接請求と裁判外紛争解決手続き(ADR)で東電の対応に「格差」が生じる現状から推察する。
 浅井によると、一般的に補償は土地収用など適法な行為による損害、賠償は違法行為で損害が生じた際に使われ、補償は原則として一定の基準、賠償は個別事情に応じた金額が支払われる。

 被災者より株主か
 直接請求に対し東電は個別事情による請求にほとんど応じず、ADRに持ち込まれてようやく検討に本腰を入れるため「補償に近い」と浅井は言う。
 浅井は東電の意識の中に「原発は国策で法にのっとり進めた」「被災者が自分で手を挙げなければ払う必要はない」という考えがあり、また、賠償額を抑えて株主らを守る「一般的な株式会社でありたい」とする意識もあると推察。その上で指摘する。「無過失でも無制限の賠償責任があるとする原子力損害賠償法と、国の巨額の賠償費用交付を踏まえれば、東電は一般の株式会社と同じではない」

 和解まで2年以上
 福島市のアパートを引き払い、福島第1原発から半径20キロ圏の田村市都路地区の実家に戻る矢先だった坪井秀幸(36)は、転居の準備をほとんど終えた時に被災、家族と共に仮設住宅に避難したが、「被災時に都路に居住していない」と直接請求で賠償を拒まれた。
 その後、ADRで賠償は受けられたが、「同じ避難生活を送るのに、なぜわれわれだけ」との思いが残った。
 坪井は2011(平成23)年秋に賠償請求したが、東電は取り合わなかった。長女(10)の転入予定を示す資料をそろえ、ADRでようやく東電を交渉の席につかせたが、和解成立は最初の請求から2年以上が過ぎた昨年11月。坪井は憤る。「自分で動かないと、何も進まないのか」
 ADRに数多く携わる弁護士紺野明弘(38)=福島市=は指摘する。「東電は『迅速な賠償の徹底』とうたうが、被災者救済は遅れている。言葉だけなら誰でも言える」(文中敬称略)

(2014年4月29日 福島民友ニュース)



( 2014年4月29日付・福島民友新聞掲載 )
 

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