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「森林賠償」金銭に限界 林業再生に反応鈍い国の機関
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県森林組合連合会が経済産業省などに提出した要望書。賠償に加え、林業再生に向けた要望が並ぶ
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「林業関係者の救済に向けて、賠償は当然必要。ただ、それだけで元通りの林業は取り戻せない」。県森林組合連合会専務の宍戸裕幸(60)は、県内の林業関係者と国の「役人」との温度差を肌で感じた経験を踏まえ、金銭による賠償の限界を指摘する。
サイクル壊れたまま
森林賠償では、森林組合など木を伐採、出荷する団体、企業の営業損害については支払われ、森林所有者への財物賠償も検討されている。しかし、今の立ち木を賠償しても、新たに生える木への放射性物質の影響が不透明なことから、木を育てて売るという林業のサイクルが壊れたままの現状が、林業関係者の懸念につながっている。
連合会は昨年10月、要望活動で経済産業省を訪問、県内の林業関係者の切実な思いを伝えたが、担当者の危機感は薄かった。宍戸によると、「林業の実態を一から説明しなければならないレベル」で、財物賠償の検討も、連合会が昨年要望し、ようやく動き出した形だ。
政治的課題に不文律
連合会は賠償に加え、林産物をバイオマス燃料として東電が買い上げるなど、従来の林業活動の代替策も提案したが、反応は鈍かった。宍戸は「役人として判断できない政治的な課題には手を出さない不文律があるんじゃないか」と推察し、指摘する。「原状回復ができないから賠償するのに、役人は賠償にばかり目が向いている。被災者救済よりも、賠償の仕組みを守るのが大事なようだ」
被災地の声を反映し、省庁をまたぐ政策課題に対する連携や調整を図るのが復興庁だ。しかし、担当者が積極的に課題解決に動いた形跡はみられない。連合会と共に要望を行ってきた田村森林組合専務理事の矢吹盛一(63)は言う。「復興庁に実態を説明しても、経産省に申し送りされた様子はない。結局は担当省庁に説明しなければしようがないのだろう」
田村市都路地区の自宅で、林業の再開を目指す坪井幸一(65)は、林業の復興のスピードの遅さに警鐘を鳴らす。「われわれが考えているのは賠償ではなく、これから林業が再開できるかどうか。放射性物質のせいで仕事ができず、10年、20年先の将来も見えない今の状況では、県内の林業は廃れてしまう」」(文中敬称略)
(2014年5月5日 福島民友ニュース)
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( 2014年5月5日付・福島民友新聞掲載 )
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