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介護職の不足が深刻化 効果上がらぬ人材確保支援事業
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特別養護老人ホーム福寿園の空きベッド。介護ニーズは高いが、原発事故後は職員が足りないため受け入れられない=南相馬市
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「もう金は要らないから、介護職員を50人連れてきてほしい」。南相馬市の特別養護老人ホーム福寿園の施設長大内敏文(57)は4月、賠償の話で施設を訪れた東京電力の社員らにそう言い放ったが、相手は「すみません」と繰り返すばかりだった。
74人求人し採用16人
原発事故から4年目。相馬地方では、事故を契機とした介護職員不足が深刻化している。同地方で介護職員を雇用する社会福祉法人は全部で10団体。今春は合計74人の求人を出したが、採用できたのは16人にとどまった。
福寿園を運営する南相馬福祉会は発足後初めて、求人に対し応募者がいなかった上、6月には4人が退職予定だ。大内は「退職理由は全て、『県外で避難生活を送る家族と一緒に暮らしたい』とか、放射線不安が要因。3年たって家庭も限界を迎えているのかもしれない」と言う。
こうした状況を受け、行政は同地方などを対象に人材確保支援策を講じている。県は本年度、国の復興特別会計を財源とし、県外から介護職員を呼び込むため支援事業にも着手した。だが、これまでの施策で大きな成果は上がっておらず、大内は「砂漠に水を一滴垂らすだけのような施策もある」と指摘する。
行政の危機感は薄く
不足しているのは介護職員だけではない。「行政には、被災地に人材を送り込んでくれることを望む。それが唯一の願いだ」。同市の大町病院事務長の鈴木好喜(62)は言う。同病院では原発事故を機に看護職員が急減、事故前は常勤者が91人いたが、今は66人(5月1日時点)だ。稼働できる病床も限られてしまった。
鈴木は「正看護師に限らず、入学後2年で現場に出ることができる准看護師は、喉から手が出るほどほしい人材。被災地向けに特例で養成機関をつくることも検討してほしい」と、将来を見据えた人材不足解消策を国に求める。
大内は、このまま人材不足が続けば社会福祉法人の合併もあり得ると考えるが、そうした深刻な状況の一方、「行政の危機感は薄い」と感じている。「介護施設が半分になって、サービスを受けられない人がまちにあふれた時、市民の批判の的となるのは行政だということが、分かっているのだろうか」(文中敬称略)
(2014年6月2日 福島民友ニュース)
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( 2014年6月2日付・福島民友新聞掲載 )
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