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原発災害・「復興」の影
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効果薄い「関連死対策」 長期避難…仮設住民に“心の壁”

効果薄い「関連死対策」 長期避難…仮設住民に“心の壁”

仮設住宅で歓談する浪江町の住民と生活支援相談員。関連死抑止に向け、地道な活動が続く

 「行政ばかり当てにできないから」。二本松市の杉内多目的運動広場仮設住宅の自治会長を務める浪江町の柴清明(62)は、月に1度の情報交換会などで住民間の連携強化を急ぐ。仮設住宅での健康管理、安否確認に関し行政予算をつぎ込んだ事業は多いが、孤独死や自殺など原発事故避難に関連した死が後を絶たない。
 浪江町は、関連死の防止に向け本年度、対策事業に約5億3000万円を計上。保健師派遣などで住民の状況把握に努めている。町社会福祉協議会(社協)も生活支援相談員20人の人件費などに約8000万円を割き、住民の健康をきめ細かく調査しているが、関連死の解消は見通せない。

 死期早めるストレス
 柴が情報交換会を開いたのは、仮設住宅で昨年4月、男性=当時(62)=が自室で孤独死したのがきっかけだった。男性は親族と別々に避難し、行き来もほとんどなかった。男性の飼い犬がほえているのを不審に思った隣人が通報。柴が倒れている男性を発見した。死後数日がたっていた。
 男性は朝からビール片手に犬と散歩する姿が頻繁に見掛けられていた。酒が入ると大声を出すため周りの人とは溝があった。男性は関連死に認定されるかは不透明だが、柴は推察する。「避難と孤立のストレス、アルコールも死期を早める。原発事故避難で家族が異変に気付けなかったのだから、関連死のようなものだ」
 町の仮設住宅は県内7市町31カ所に分散し、相談員の巡回を受けるのは多い人でも週2、3回。同社協も男性の状況を把握しながら、孤独死は防げなかった。
 住民側が訪問を拒否した場合の対応も課題だ。同社協事務局長の原芳美(62)は「プライバシーもあり、住民とどこまで関われるかは難しい」と話す。現行制度では、原発事故に翻弄(ほんろう)された避難住民の「心の壁」を越えられないでいる。

 教訓は生かされたか
 阪神・淡路大震災では発災後3〜4年で避難住民の孤独死や自殺が増えた。教訓は生かされているのか―。「関連死は当初から予想でき、対策の必要も分かっているはずなのに(行政と住民との間に)隙間があり過ぎる」。柴は続ける。「いくら予算を投じても、これでは、死者は減らない気がする」(文中敬称略)

(2014年6月6日 福島民友ニュース)



( 2014年6月6日付・福島民友新聞掲載 )
 

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