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原発災害・「復興」の影
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「移住避難者」続く不安 住民とのあつれき恐れ隠れて生活

「移住避難者」続く不安 住民とのあつれき恐れ隠れて生活

郡山市田村町の大型分譲地「東山ヒルズ」。ほぼ避難者の家だけで占められた一角がある

 「双葉郡の人が周りにたくさんいれば、そりゃあ安心だよ」。郡山市東部の大型分譲地「東山ヒルズ」に家を建て、昨年12月から暮らす富岡町の渡辺孝一(69)は言う。

 一角は「双葉郡の町」
 1997(平成9)年に分譲が始まり、長年販売が低迷していた東山ヒルズだが、原発事故後は避難者の購入が相次ぐ。昨年度の購入者51人のうち避難者は24人。住宅地にはほぼ避難者だけで占められた一角が出現し、さながら「双葉郡の町」の様相だ。
 避難者が多くても、不安は完全には拭えない。渡辺は家を建てる際、防犯のため敷地の外灯を多めに設置、車を車庫内に置く際は必ずシャッターを下ろす。昨年まで暮らしていた仮設住宅で、車に傷を付けられた人がいたことなどが理由だ。「この住宅地には外部から入ってくる人も多いから」
 不安の背景には、賠償金や税金負担をめぐる受け入れ先住民との間のあつれきが、根強く存在しているという現実がある。

 「仮設の住所伝える」
 避難者が多く暮らすいわき市。「市内に家を建てた町民には、近所の人から前の住所を聞かれた際は、双葉町の住所ではなく、一時暮らした仮設住宅がある市内の住所を伝えるようにしている人が多い」。仮設で暮らす男性(49)は、町民であることを隠して生活する人がいる実態を明かす。
 渡辺は9月の車検の際、車のナンバーを「いわき」から「福島」に変えるつもりだ。「そうすればもう、外からはどこの人か分からない。富岡にいつか帰りたい気持ちもあるけど、賠償が終われば住民票も移すしかねえべな」。少し、寂しそうにつぶやいた。
 「心では今後も町と関わっていきたいと考える人でも、住民票を移すなどして町との関係を断ってしまう人が最近増えているように感じる」。富岡町民が開催してきたタウンミーティングへの協力などで復興支援に当たる福島大うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授の佐藤彰彦(49)は、そう指摘し問題提起する。「町民としての誇りといった大事な心情を切り捨てなければ、避難先で前向きに生きていけない状況に追い込まれているためではないか」(文中敬称略)

(2014年7月8日 福島民友ニュース)



( 2014年7月8日付・福島民友新聞掲載 )
 

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