かつて「絹の町」として栄えた川俣町。同町の経済と雇用を、いまは金属加工関連の中小企業約40社が支えている。金属加工場からは、いつもと変わらない金属を削る音が響く。しかし昨秋からの急激な景気悪化が町の主要産業の経営に暗い影を落としている。
旋盤を使った丸型加工で機械部品や工具を製造するハンザワ製作所も不況の荒波を受ける。社長の半沢要祐さん(69)は昨年来の経営状況を「いくら景気が悪い時でも仕事はあったが、今回は本当に仕事がない」と、1972(昭和47)年に独立創業して以来の苦況に険しい表情だ。
同社の主力製品は、自動車関連の製造現場で使われる工具の部品。受注は昨年から徐々に減り始め、現在は例年に比べ約9割減った。世界同時不況を受けた自動車産業の事業縮小により関連産業の工具需要が低下、同社のような下請けの中小企業への発注減につながった。
厳しい経済情勢に耐え、会社経営を続ける半沢さんは「部品メーカーなど関連産業のすそ野が広い自動車などの基幹産業を支援することで、中小企業にも波及効果が行き渡るような政策でないと意味がない」と、実効性が高い経済政策の推進を望んでいる。
衆院選で有権者に政権選択を求める各党はマニフェストで、そろって中小企業支援などの経済対策を打ち出している。自民党は地域活性化への支援を3年間継続、内需を拡大する基盤を整え40〜60兆円の需要を創出する経済成長策を掲げた。連立与党の公明党は、産学官連携などで新たな経済成長への道を開く施策を挙げた。
政権交代を目指す民主党は、中小企業の法人税率の18%から11%への引き下げ、下請け支援の「中小企業いじめ防止法」制定などを経済政策の柱とした。社民党は4千億円に上る中小企業の経営・金融支援、共産党は中小企業憲章の制定や中小企業対策費の1兆円増額などを掲げる。
政権を懸け、マニフェストを前面に押し出して衆院選に臨む各政党。半沢さんは「とにかく公約だけは守ってほしい」と、マニフェストの実現を強く求める。
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