「当たり前でいいから、国民の生活を保障してほしい」。会津若松市の農業佐藤正幸さん(67)は、衆院選を控えて出そろった各政党のマニフェスト(政権公約)を見比べながら、先の見えない高齢社会への不安を漏らした。無年金・低年金対策や後期高齢者医療制度の見直し、年金記録問題への対応など高齢者福祉政策は政権選択の大きな焦点となる。
「今は健康」と言う佐藤さんだが、年金だけで生活費を賄っている知人から、「資金が足りず福祉施設に入れなかった」という話を聞いた。年齢を重ねるほどに医療費などの負担が増えていく現実があるだけに、身近に迫る「負担社会」に危機感を感じる。鈴木さんは「老後を保障するという年金制度本来の意義に立ち返るべき」と、国民目線の社会保障政策を求める。
福島社会保険事務局によると、60歳以上が受ける老齢年金の県内受給者は増加傾向にあり、2008(平成20)年度末で前年度比約2万人増の約65万8000人。受給額は約220億円増の約6千億円に上った。県の推計人口から推測すると60歳以上の県民の9割弱が老齢年金を受給したことになるが、残る1割程度は無年金者の可能性が高い。
無年金・低年金対策で自民党は受給資格を得るための最低加入期間の短縮などを目指す方針。民主党は年金制度の一元化と月額7万円の最低保障年金の創設を掲げた。公明党は低所得者の加算年金新設で最低保障するほか、共産党、社民党も最低保障年金を創設する考え。75歳以上の後期高齢者医療制度では、自民と公明が現行制度の見直しによる充実、民主、社民、共産は制度廃止を打ち出している。
会津若松市の主婦渡部桂子さん(81)は、医療費などの負担増で友人との旅行をあきらめるなど、外出を控えることが多くなった。「年金から天引きされる額が増え、無駄のない生活を心掛けている」と明かす。「高齢者が暮らしにくい時代。将来も信用の持てる政治をしてほしい」。次世代も安心できる国づくりを信じ、マニフェストに懸ける。
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