|
【 3 】
|
受注減、先見えぬ業界
生活や基盤整備に支障も
大型連休谷間の4月30日。双葉郡の建設会社に勤務する40代の男性社員は、民間企業を中心にあいさつ回りなどの営業活動に汗を流した。「国や県の発注件数が前年度に比べ2割落ち込んだ。景気低迷で民間の受注も厳しい」とため息を漏らす。
鳩山政権が本年度予算で貫こうとした「コンクリートから人へ」の理念。子育て支援など社会保障に手厚く予算を配分した一方、公共事業関係費は32年ぶりの低水準となる対前年度比18.3%減の5兆7731億円まで切り詰めた。景気低迷が続く中での公共事業の大幅削減に対し、不安を募らせる建設会社。男性社員は「理念は立派だが、通学路に歩道がなくても『コンクリートから人へ』と言えるのか」と不満をぶつける。
公共事業の動向に経営を左右される建設業は、元請け“下請け”孫請けの重層的な構造から働く人が多く、町村を中心に地域経済や雇用を支えている。県建設業協会石川支部長の志賀由和さん(59)は「除雪や災害時の対応などは地域の道を知り尽くした地元建設業者がやっているのに、今後できなくなれば、地域住民の生活に支障が出る」と訴える。
同支部の加盟業者は、かつての14社から半分の7社まで減った。志賀さんは「受注が少なくて経営計画が立たず、支部会員全体が不安で先が見えない。将来は共同受注も検討せざるを得ない状況だ」と切実な思いを訴える。
公共事業費削減の影響は農林水産業関連の基盤整備にも影響を及ぼす。本年度予算で、農業関係の公共事業である土地改良事業費が半減された。県内の農業団体からは農業用水路の改修などの遅れを懸念する声がある。
県土地改良事業団体連合会専務の茂木功一さん(60)は「公共事業の中でも農業用水路などは『食』に直結する」と指摘した上で、削減の影響について「土地改良事業には農家自らも負担金を拠出している。農業投資が滞れば、農家の生産意欲が落ちる」と話す。
「コンクリートから人へ」の急激な変化に、県内で戸惑いの声が聞かれる。
|