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【 3 】
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「個人票」獲得に奔走
各陣営、制度周知に苦労
「政党選択」の色合いが濃かった参院選比例代表。候補者個人の得票数で当選の優先順位が決まる「非拘束名簿式」となって今回が4度目。比例候補は、各種団体が組織力で国政に送り込む「組織内候補」や、知名度が武器の「タレント候補」が主流の中、県内各党は政党名で投票した「政党票」に着目、本県ゆかりの候補者擁立に動いた。県内では「政党票」よりも「個人票」の獲得を目指す戦いに様変わりしている。
民主党は県連重点候補として前県議の中村秀樹を立てた。地元いわき市を中心に県内の民主支持層と推薦団体の組織票を束ねて当選を目指す。「政権与党として、自民の牙城だった各種団体に食い込むチャンス」と、自民党県連が比例候補を擁立しないスキを突き、団体切り崩しを進めて党勢を拡大、中村当選に結びつけようと意気込む。
新党改革は、県連代表の荒井広幸が比例に再挑戦。6年前は郵政民営化反対派の旗手として全国の郵政関係団体と、地元県南の「荒井党」の支持を得た。郵政関係票は連立与党の国民新党に移ったが、「総理にふさわしい政治家」の一人舛添要一を擁し選挙に臨む。選対は「1人が5人に声をかけて」と地縁、血縁中心の草の根運動を展開中。
昨年の衆院選比例代表で議席を得ながら候補者不足で議席を譲ったみんなの党は、衆院選福島4区で4万余を獲得した県連代表の小熊慎司を南東北の重点候補とした。小熊は、参院議員がいない会津を意識し「会津発全国へ」をスローガンに、第三極に期待する無党派層の投票の受け皿を目指す。活動は宮城、山形両県に広げている。
ただ各陣営は、有権者に候補者名を書いてもらう困難さに直面している。衆院選の比例は、あらかじめ順位付けされた名簿で獲得議席数により当選者が決まる。有権者には昨年の衆院選の印象が強い。ある陣営の幹部は「支持者から『政党名を書くよ、名簿何番だい』と言われる。制度をしっかり伝えるのは骨だ」と、衆院選と勘違いする有権者への対応に頭を悩ませる。別の陣営は「代表の名前は認知度が十分だが、候補者名を書いてもらわなければ」と痛しかゆしの様子だ。
たちあがれ日本から、県内で知名度が高い矢吹町出身の野球評論家の中畑清が出馬することも、比例票の行方を複雑にしており、各陣営とも「個人支持者」の獲得に奔走する。(文中敬称略)
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