【清流あらかわフォーカス<7>】一見レトロ、実は最先端

 
四季の里 農村公園・四季の里を流れる農業用水路とその流れを利用して発電する水車小屋(左上、撮影・矢内靖史)

 「ザッ、ザッ、ザッ」。大きな水車が水しぶきを上げながら、ゆっくりと回る。水車小屋があるのはレンガ造りの建物が並ぶ福島市の農村公園・四季の里の中心部だ。「農業用水路を活用して電力を生み出している。訪れた人は再生可能エネルギーの取り組みを身近に感じられるのではないか」。公園の指定管理者、福島市観光開発西事業所長の広瀬健作さん(48)は胸を張る。

 昔から水車小屋は、穀物をついて粉にするための動力として利用されてきた。ここ四季の里では、荒川から取水している農業用水路「荒井堰(ぜき)」の水の流れを利用して発電している。子どもの再生エネ学習に活用するため、2015(平成27)年に地元福島市飯野町の中川水力と荒井堰水利組合の協力により小水力発電が設けられた。

 水車は落差が少ない場所でも適している下掛け方式を採用。水車本体は直径約6メートル、幅約1.2メートル。発電出力2.5キロワットで、四季の里で使う電力の一部を賄っている。水路の水流で水車を回転させ、増速機で発電機への回転数を増速して発電する。水車の回転は通常1分間に5~6回転とゆっくりだ。そのため増速機を使って回転数を上げ、1分間に600回転させて発電している。

 発電力こそ少ないが、小水力発電は昼夜を問わず、天候にも左右されずに安定して電力を供給できる再生エネの優等生だ。福島市は資源エネルギー庁から「次世代エネルギーパーク」の認定を受けており、その一つとして四季の里の水車が選ばれている。水車を見学しようと、県内外から多くの見学者が訪れるようになった。

 水車小屋では季節に合わせた地元農産物を使ったアイスクリームが販売されている。荒川の水流を眺めながらデザートを味わうと、自然の恵みがじっくりと体に染み込んでいく気がした。(石井裕貴) 四季の里  四季の里 福島市が1995(平成7)年7月に開園した農村公園で、広さは約8ヘクタールある。市南西部の荒井地区にあり、吾妻連峰を仰ぎ見ることができる。園内にある施設は16世紀の西欧風建築をイメージ、レンガ造りの建物が印象的だ。広々とした園内は芝生に覆われ、花壇には季節の花が咲き、四季折々の景観や伝統工芸、農産物が楽しめる。近くには朝ドラ「エール」主題歌の映像にも使われた水林自然林がある。

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