【エールのB面】村野鉄男役・中村蒼さん 男らしく...繊細な『盟友』

 

 朝ドラ「エール」は、後に「福島三羽ガラス」と呼ばれる主人公・古山裕一(窪田正孝さん)と村野鉄男(中村蒼さん)、佐藤久志(山崎育三郎さん)の幼なじみ3人の熱い友情が見逃せない。第3~6週は鉄男が、音楽から遠ざかった裕一に再び作曲家を決意させる重要な役どころだった。11日からの第7週は舞台が東京へと移る。中村さんに役への思いなどを聞いた。

 人間性憧れる 

 鉄男の幼少期はけんかの強い「ガキ大将」だが詩を愛し、優しさも持ち合わせていた。

 「鉄男は正義感が強く、文学への思いも持っています。人が共感する詩を書くことは、人の気持ちが分かること。ガキ大将らしい男らしさと繊細さの二面性を演じたいです。子役たちの演技が素晴らしかったので、きっちりと引き継いでいきたいです」

 鉄男は幼少期の裕一に「詩人になれる」と言われたことを励みに詩を書き続ける。裕一が作曲の道を諦めそうになったときは、国際作曲コンクールへの応募を提案し、教会で説得したりと支える姿が印象的だ。

 「幼少期の鉄男はつらい境遇に負けず頑張っています。僕も高校生のとき芸能活動のため一人で上京しました。もちろん周囲の助けはありましたが、どこか鉄男に通じる部分も感じます。ただ、鉄男の男らしさは僕とは似ていないので憧れてしまいます。鉄男は友のために怒り、人の幸せを自分の幸せに感じる。僕もそんな人間になりたいです」

 新聞社は戦場

 鉄男のモデルは作曲家・古関裕而の幼なじみで福島民友新聞記者として活躍し、後に作詞家となった野村俊夫だ。野村は福島民友新聞社で文芸欄などを担当した。ドラマでも新聞社のシーンが登場している。

 「当時の新聞社は、文字通り"ネタ"を自分の足で稼ぐ職業でした。演じる中で、情報の大事さや情報を得た喜びなどを感じました。こんなに苦労を重ねて新聞が出来上がっているんだということも実感でき、新聞社の現場はまさに"戦場"だなと思いました」

 三羽ガラスへ

 野村は古関の勧めもあって上京。コロムビア専属の作詞家になり数々のヒット曲を生み出した。

 「作詞家は素晴らしい仕事。例えば『故郷』という言葉は受け手によってそれぞれの光景が浮かびます。歌詞の言葉が膨らみ、心に響き、共感を得ていく。野村さんは繊細で人の気持ちをくみ取れる。戦時中の曲でも故郷や家族を思う歌詞があるのは印象的です」

 古関と野村、歌手伊藤久男(現本宮市出身)の3人は「コロムビア三羽ガラス」として人気曲を世に送り出した。東京編ではそれぞれが音楽の道に進み、下積みからヒット曲を出すまでが描かれる。

 「(東京編で)3人が集まると前向きなシーンが多くて明るくなる。好きな場面は居酒屋で人を楽しませるシーン。それぞれが音楽の力を認識し、人を喜ばせることの良さも再認識します。なかなかヒットに恵まれない『福島三羽ガラス』が開花するまでをぜひ楽しみにしてください」

 窪田さん、山崎さんとの現場でのエピソードは。

 「劇中の裕一はおどおどしていますが、普段の窪田さんは男らしくてギャップがすごい。演技力もさることながら現場を明るくし、まさに朝ドラの主人公にふさわしいと思います。育さん(山崎さん)は普段からキラキラした雰囲気をまとい、優しく頼れる兄貴分。僕がギターの練習をしていると、教えてくれたこともありました。2人からはいつも刺激を受けています」

 古関や野村らは戦前から戦後の激動の時代を音楽の力で勇気づけてきた。朝ドラを通し伝えたいことは。

 「古関メロディーの中でも『闘魂こめて』や『六甲おろし』などは一度聴いたら忘れない。闘志あふれる歌で影響力も大きい。ドラマの登場人物が当時の日本を元気づけたように、僕たちも『エール』を通し皆さんを元気づけたいです」

 【もっと知りたい】本紙の文芸欄など担当

 福島市出身の作詞家・詩人野村俊夫(本名・鈴木喜八、1904年11月21日~66年10月27日)を紹介する。魚屋の三男に生まれ、作曲家古関裕而とは幼少から遊び仲間。生涯3千編以上の歌謡詩を創作したという。

 野村は1924(大正13)年から7年、福島民友新聞社記者として文芸欄などを担当した。古関を民友に頻繁に出入りさせ、古関は児童詩に曲をつけて紙面で発表する仕事をしたという。

 古関に誘われて野村も31(昭和6)年に上京、2人でデビュー曲「福島行進曲」を発表。野村の代表作は戦時歌謡「暁に祈る」や「東京だョおっ母さん」「湯の町エレジー」など。野村は39年にコロムビア専属作詞家となり、古関と歌手伊藤久男を加えて「コロムビア三羽ガラス」と呼ばれた。

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