【エールのB面】福島ロケ支えた人たち 序盤舞台、住民もチーム一員

収録の一時休止で朝ドラ「エール」は6月29日から再放送となり"2周目"に突入した。「こんなシーンがあったのか」「これが後につながっているとは」。子役たちの熱演に見入りながら、新たな発見もある。序盤の舞台は福島。昨年10月に行われた福島ロケや撮影を支えた市民の姿を紹介する。「このシーンはあそこで撮影したのかな」と想像を膨らませながら放送を楽しみたい。
延べ240人参加
福島ロケが行われたのは古関裕而の出身地・福島市にある「民家園」「水林自然林」「信夫山」など。古関がモデルの主人公・裕一を演じる窪田正孝さん、ヒロインで妻の音を演じる二階堂ふみさん、裕一の両親を演じた唐沢寿明さん、菊池桃子さんらが参加した。主な撮影シーンは、裕一の少年時代、福島商業学校(現福島商高)時代のハーモニカ発表会、主題歌が流れるおなじみのタイトルバックなどだ。
このうち少年時代は、愛らしい裕一役の石田星空さん、ガキ大将の村野鉄男役の込江大牙さん、存在感のある佐藤久志役の山口太幹さんらが熱演した。幼少期の音役の清水香帆さんも「川俣の教会で裕一と運命の出会いを果たす設定」で訪れた。
郡山市の国重要文化財「安積歴史博物館」(安積高内、旧県尋常中)でもロケが行われ、福島商業学校のシーンが撮影された。NHKによると、これら福島ロケには地元住民役や高校生役などで、延べ240人がエキストラとして参加したという。
放送見て納得
「福島ロケでは多くの方に協力してもらった。民家園を巡って撮影場所を探すのもおもしろいでしょうね」。「エール」で演出を務める吉田照幸さんは、福島民友新聞社のインタビューで、エキストラや撮影に協力した市民への感謝とともに、ロケ地巡りを提案している。
なぜ民家園かというと、園内にある芝居小屋「旧広瀬座」で、市民エキストラが詰め掛ける中、裕一が所属する「福島ハーモニカ倶楽部」の演奏会のシーン(第13話)を撮影。さらに幼少時代は、古民家脇や園内の道などでも撮影され、見覚えのある場所が点在しているからだ。
「役者さんの迫真の演技、制作陣の妥協なしの姿勢を間近で見て感動した」と語るのは、朝ドラ誘致に尽力した福島商工会議所青年部の西形吉和さん(41)。演奏会のシーンに人生初のエキストラとして参加した。 劇中では演奏会前に裕一が音楽の道を諦めて養子に行くことを決意し、自分が作曲した曲の指揮を執る過程が描かれる。撮影時はどんなシーンなのかの説明がなかったといい「窪田さんの指揮が終わると唐沢さんが急に泣き出す。現場ではその理由が分からなかったが、放送を見てそれが分かった」と振り返る。
地元の味提供
福島市には、ロケを誘致する「市ロケツーリズム推進会議」が組織され、"実動部隊"に当たる「情熱ロケ応援隊」がボランティアで支援している。福島ロケでは、制作陣とエキストラをもてなそうと、2度の炊き出しが行われた。振る舞われたのは、古関の大好物「紅葉漬け」のおにぎり、具だくさんの芋煮、旬の福島産果物だ。
「おいしいと喜んでくれてうれしかった」と語るのは、同応援隊の福地雅人さん(61)=仲見世社長。子役と接した際に一人だけ洋服の子ども(久志役の山口さん)が目立っていたといい、「きっとこの子が主人公だなと思っていたが、放送を見て違うと気付いた」と当時を思い出して笑った。
同市の安斎果樹園の安斎さと子さん(71)は果物を提供し、切り分けた。「NHKの番組で出演者が福島の果物がおいしかったと話しているのを見てうれしくなった」と振り返る。「エール」放送を機に全国の知人から連絡があるといい「古関さんの功績が広まっている。こんな世の中だからこそ盛り上げてほしい」と期待を寄せる。
昨年12月、東京のNHK放送センターで開かれた取材会で、窪田さんは福島ロケについて「雨の中だったが、ワンカットが終わるたびにエキストラから拍手を頂き、より頑張らなくてはと奮い立った。真剣さが表情から伝わった」と振り返っていた。
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