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  【 慧日寺悠久の千二百年TOP 】
ー  工事が進む現地  ー
 
 古式に則り「工匠の儀」

 京都の工場での木材加工を経て、昨年末から現地への部材搬入が始まった。年明けから着手した組み立て工事は、これまで約半年が経過した。今回は、現在まで行われた素屋根内での作業を一部紹介しよう。

 仮組み 部材は、一度工場において礎石上に仮立てをし、光りつけ加工を行っている。それでも、木は生きもので搬入までの間に微妙な伸縮をする。それぞれの部材を隙間すきまなくぴたりと組むには、現地での再調整が必要だ。そこで、現場ではまず一度側柱(がわばしら)を全て立てて、頭貫(かしらぬき)で繋(つな)ぎ長押(なげし)を回す「仮組み」という作業を行った。軸部の外回りを決める重要な工程で、一材ごとに組んでははずし、削っては組む作業を繰り返した。非常にデリケートな作業で、およそ2カ月を要した。

 本組み 仮組みで部材の再調整が終わると、いよいよ本組みに入る。ここでは一本一本鍛造した和釘を使用して長押を留める。また、復元金堂では耐震面の補強を考慮して、壁下地に格子を組み入れる設計としている。そのため、仮組みで組んだ頭貫や内法長押(うちのりなげし)を一端すべて取り外し、壁格子を各柱間の上から落とし込んで設置した。

  壁は漆喰(しっくい)仕上げとなるが、荒打ち・中塗り・白漆喰仕上げと大きく3段階の工程を経る。まず下地となる荒土の塊を、壁格子の枠一つ一つに詰め込む根気のいる作業が行われた。壁土との絡みをよくするため、格子に藁縄(わらなわ)が巻かれている。この後、中塗りまでの間十分な乾燥期間を置く。

 組物 軸部の組み上げが終わると、柱上には組物が組まれる。組物は主に斗(ます)と肘木(ひじき)という個々の単純な部材から構成され、それらを複雑に組み合わせることによって、丸桁(がぎょう)を受けるさまざまな形式を生み出した。斗の高さの割合や斗繰とぐりの曲線、肘木の曲線が時代を反映し、一般には、建物の格式が高いほどより複雑な形式が採用される。復元金堂では積雪荷重を配慮して、大斗(だいと)上に肘木を置き、巻斗を3個並べて丸桁を受ける平三斗(ひらみつど)を採った。

 軒回り 軒反りや軒の出など、軒回りは機能面のみならず外観の美しさを大きく左右する重要な建物の構成要素である。垂木(たるき)・隅木・木負(きおい)などの反りや角度、太さや形状に至るまで綿密に検討されて部材が刻まれ、木組みが行われた。

 屋根 垂木が上がると屋根下地の工程へと移る。復元金堂は天井板を張らない化粧屋根裏天井のため、まず最初に垂木の上から胡粉を塗布した化粧板が打ち付けられる。その後、捨て野地・桔木(はねぎ)・野地板などの何重もの工程を経て、7月中旬ごろを目処(めど)に軒付け部から屋根葺きが始まる。

 上棟式がいよいよ明後日に迫った。当日は、一連の作業を古式に則(のっと)って再現する「工匠の儀」が執り行われる。建物の中心に杭を打ち込む「博士杭(はかせぐい)の儀」大勢で棟木を曳き上げる「曳綱(ひきづな)の儀」その棟木を打ち固める「槌打(つちうち)の儀」の順に進められ、最後に散餅(さんぺい)・散銭(さんせん)が行われる。検地・式具・振り幣・工匠の諸役は、それぞれ遺風を伝える装束で身を包み、また、文化財学習も兼ねて地元の小学生が綱を曳く。工事も中盤を迎え、見ごたえのある盛典になりそうだ。

(磐梯山慧日寺資料館学芸員)

白岩賢一郎

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仮組みの全景
仮組みの全景

垂木上に張られた化粧屋根板
垂木上に張られた化粧屋根板

【2007年6月27日付】
 

 

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