【 外遊びと発達(4) 】 屋内での運動に限界

 
【 外遊びと発達(4) 】 屋内での運動に限界

ボールを使い、芝生の上で自由に遊ぶ子どもたち=10月30日、福島市・四季の里

 「体力の低下をなんとか防ごうと、焦っていた。子どもたちには申し訳ないことをしたと思っている」。郡山市で11月23日に開かれた乳幼児精神保健学会の学術集会。みどり幼稚園(同市)の園長平栗裕治(66)は講演で、震災、原発事故後の2年間を振り返った。

 『遊びのスイッチ』

 同幼稚園では屋外での遊びを制限していた2年間、廊下や遊戯室など屋内で運動に取り組んだ。廊下を走る際は、危険を避けるため子どもたちに列をつくらせて順番待ちをさせた。「楽しくなかったと思う。『もっと遊びたい』という、子どもたちの『遊びのスイッチ』を入れてあげることができなかった」

 昨年度から時間を決めながら外遊びを再開している。「泥んこ遊び」などに自発的に取り組む子どもたちの姿を見て、「外遊びに勝るものはない」と実感したという。

 震災、原発事故後に制限されがちになった外遊びや自然体験を、子どもたちに提供しようと、県内ではさまざまな事業が展開されている。

 10月30日、四季の里(福島市)の芝生の上。NPO法人こどもの森ネットワーク(猪苗代町)の理事長橋口直幸(55)が袋から色とりどりのボールを取り出すと、保育園児たちが先を争うように集まってきた。「1人1個あるから大丈夫だよ」。子どもたちは、ボールを真上に放り投げたり、斜面に転がして追い掛けたりと自由に遊ぶ。

 「これ何だか分かる? 野ウサギのフンなんだよ」。橋口が地面を示すと、子どもたちから驚きの声。近くの森にも入り、落ち葉の上を歩く感触も楽しんだ。

 同法人の事業では、バスで福島市西部の公園や猪苗代町に向かう。同市など中通りの保育所が定期的に参加している。

 橋口は「子どもは本能的に外遊びが大好き。除染が進んだことや屋内遊び場が各地に整備されたことで、『遊ぶ場所がない』という状況は解消されてきた。だが、自然に親しむ体験はまだ制限されがち。今後もきめ細かい支援が必要だ」と考えている。

 なくして分かるもの

 支援団体の会合などで配布しているチラシに、橋口はこう書いた。「大切なものは、なくして初めて分かることがあります。福島県では『子どもにとっての外遊び』がまさにそうです」(文中敬称略)