【 外遊びと発達(5) 】 探求心育む自然体験

 
【 外遊びと発達(5) 】 探求心育む自然体験

「子どもを取り巻く環境の変化に注意する必要がある」と話す大宮教授

 震災と原発事故は、子どもたちが発達段階に積み重ねる体験の内容に影響を与えた。幼児教育・保育が専門の大宮勇雄福島大教授(61)に、子どもたちの現状や今後注意すべきことを聞いた。

 生活環境の変化注意

 --震災、原発事故の子どもへの影響として、心配されることは。

 「放射線自体の長期的な健康影響についてしっかり見守っていくことは当然だが、同時に、原発事故に起因する生活環境の変化に注意を払う必要がある。原発事故当初は外遊びが厳しく制限され、運動の機会が失われたが、事故からの時間の経過に伴ってそうした状況は改善に向かっている。だが、自然の中で植物や虫に触れてみるなどの自然体験が、原発事故前と比べ少なくなっていることを心配する保育者は今も多い」

 美に感動 感性の素地

 --子どもにとって、自然体験の重要性とは。

 「環境破壊の実態を世に告発した米国の海洋生物学者レイチェル・カーソンは、自然がいかに子どもの『もっと知りたい』という好奇心を刺激し、その後の探求心の萌芽(ほうが)となるかを、遺作『センス・オブ・ワンダー』で生き生きと描いた。葉っぱの形や虫の動きなど、自然は『不思議』の宝庫。美しいものに感動する感性の素地も育まれる」

 --そのほか、子どもの遊びについて指摘できることは。

 「自らの関心に従い、思うままに体を動かす遊びが子どもの発達には欠かせない。だが屋内での遊びにはルールが多い。事故を契機に県内では屋内遊びの機会が増えたが、自由が一部制限された遊びに子どもたちが慣れてしまっていないか、もう一度見つめ直すべきだろう」

 --社会はどのような対応が必要か。

 「子どもの適応能力は高く、原発事故で失った体験をその後の発達段階で穴埋めすることは十分可能。周囲の大人は、自然に興味を持つ機会などを子どもに提供するよう努めてほしい。この地で安心して子育てができるよう、除染を進め、放射線をめぐる不安に応える相談体制を充実させることも求められる」=「外遊びと発達」おわり