心のケア訴える声 依然高いストレス傾向、小さな変化対応

 
心のケア訴える声 依然高いストレス傾向、小さな変化対応

 地震、津波による心の傷、被災当初の外遊び制限に起因するストレス、避難による環境変化に伴うストレス--。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の後、子どもたちの心のケアの必要性を訴える声が専門家から上がっている。子どもの心の問題は大人と比べて表面化しにくい傾向があり、小さな変化に対応した支援が必要という。そんな中、県内では、子ども自身に心の健康を保つ力を身に付けてもらおうと、教育に重点を置いた取り組みも広がりつつある。

 震災、原発事故後の子どもの心を調査している福島大災害心理研究所は、「赤ちゃん返り」の有無など子どもの様子を聞くアンケートを保護者に行い、回答を「まったくない」(0点)、「あまりない」(1点)、「ときどき」(2点)、「よくある」(3点)などと点数化。各質問の平均値から「ストレス得点」(0〜3点)を導いている。

 福島市の小学生・幼稚園児と保護者2854組から昨年1月に回答を得た調査結果を、同市での過去の結果や、秋田、福井、兵庫の3県で2013(平成25)年に行った結果と比較したのが【グラフ1】。数値は年々減少しており、時間経過に伴い子どものストレスは低減する傾向にあるが、他県と比べると依然高い水準にとどまる。同研究所は、親の放射線不安、ストレスが高いと、子どもも高くなるとみている。

 一方、被災当初の地震、津波の影響については、文部科学省が12年5月、被災7県(本県、青森、岩手、宮城、茨城、栃木、千葉)の幼稚園児から高校生までのストレス状況を調査した。その結果が【グラフ2】。保護者に回答を求めた調査で、「災害のことを思い出して突然おびえたり、興奮や混乱することがある」など心的外傷後ストレス障害(PTSD)が疑われる症状が見られた割合が22.9%に上るなど、PTSDやストレス症状に関する4項目で、本県はいずれも7県平均よりも高かった。

 震災、原発事故から丸4年を迎えるが、福島大子どものメンタルヘルス支援事業推進室の桝屋二郎特任教授(42)=児童精神科医=は「阪神大震災では、『落ち着きがない』など教育的配慮が必要な児童生徒の数が減少に転じたのは5年目以降だった。放射線や長期避難の問題がある福島はさらに問題が長引く恐れがある」と指摘し、こう付け加える。「子どもの心をめぐり、ことさらに危機をあおることはいけないが、楽観が過ぎることも慎まなければならない」

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 震災、原発事故後のさまざまなストレスに打ち勝とうとする子どもたちの姿や、支援者の取り組みを追う。