【 甲状腺検査(1) 】 不安に耳を傾け支援

 
【 甲状腺検査(1) 】 不安に耳を傾け支援

田代の元に届いたB判定の通知と、医師が説明の際に示した甲状腺の図

 「今のうちは大丈夫。仮にがんになっても死亡率は低い」

 昨年秋、県中地区に住む田代良平(55)=仮名=は、福島医大の担当医から説明された中学2年の長男(14)の甲状腺の2次検査の結果を、自宅で本人に伝えた。心の内は分からないが、長男はほとんど表情を変えず、「細胞を取る検査って痛いのかな」と答えた。良平は、長男にうまく説明できたか、今も自信を持てない。

 甲状腺検査は現在、原発事故当時18歳以下だった人を対象に、状態を把握する1巡目の「先行検査」がおおむね終わり、それと比較するための2巡目の「本格検査」が行われている。

 長男は2012(平成24)年の先行検査で、しこりが5ミリ以下などのA2判定だったが、昨年の本格検査の1次検査で約9ミリのしこりが見つかりB判定。続く2次検査では郡山市の病院で血液検査やエコー診断を受け、しこりはがんでなく「良性の腫瘍」とされた。

 2次検査の結果は良平が1人で説明を受けた。担当医は、甲状腺の図に腫瘍の位置を書き込みながら「がんではないと思う」「今は問題ない」などと話した。不安がある場合は、民間病院でも細胞の診断が受けられるとも続けた。

 「何でうちの子が」

 説明はうまく頭に入らなかった。本格検査の1次検査を終えて結果が出た約7万5000人(昨年末現在)のうち、2次検査に進んだのは611人。「本当に大丈夫なのか」「何でうちの子が」。さまざまな考えが頭の中を駆け巡った。

 今考えれば、感情的になっていたと思う。長男への説明に自信が持てないのは自分自身がよく分かっていないから。冷静になった今も、専門的な話をうまく理解できず不安が残る。

 保護者らに寄り添う

 福島医大は、2次検査に進む子どもや保護者の不安を抑えるため13年11月にサポートチームをつくった。当初1人だったスタッフは現在、支援の必要から5人にまで増えた。2次検査では担当医が「仮にがんでも進行は遅い」などと説明、さらにスタッフが検査の待ち時間などに子どもらに寄り添い、不安に耳を傾ける。

 ただ、良平のような不安を抱える人もいる。検査を担当する同大教授の鈴木真一(58)は「独り善がりにならず、相手を見ながら繰り返し説明していくしかない」と話す。

 良平にとって「救い」は長男と気軽に甲状腺検査の話ができることだ。

 「クラスで2次検査を受けたのは何人だ?」

 「俺だけだよ」

 何げない会話から、学校でも検査は話題になっていること、しかも同級生の間でさほど深刻に受け止められていないと感じ取り、胸をなで下ろす自分がいる。(文中敬称略)