【 甲状腺検査(3) 】 「安心」自ら積み重ね

 

 「一度の検査で『問題なし』と出たからといって、大丈夫なわけではないんだ」

 説明会で誤解気付く

 いわき市の神谷(かべや)幼稚園で2月19日に開かれた福島医大の甲状腺検査出張説明会。三女はるか(6)を同園に通わせる同市の主婦伊谷千江美(34)は講師の話を聞き、検査に対する自身の誤解に気が付いた。1巡目の甲状腺検査は、2巡目以降の検査と比較するための「先行検査」の位置付け。伊谷は、継続した検査が必要と知って少し不安にもなったが、知識が深まったのは良かったと思う。

 長女あやか(11)、次女なつみ(9)、はるかの3人は2013(平成25)年に先行検査を受け、いずれもA2判定を受けた。結果が届き、「嚢胞(のうほう)(体液がたまる袋)があります」との文面に、千江美は「まずいのかな」と思った。ただ、見つかることは珍しくないことを知り安心した。

 子ども3人はほとんど検査結果を気にしていない。はるかの検査には立ち会ったが、「ちょっと、喉に(ゼリーを)ぬりぬりするだけだから」と話すと、はるかは素直に検査を受けた。千江美も安心した後は、届いた検査結果を破って捨ててしまった。

 千江美は、検査に対する自身の姿勢に、放射線への受け止め方を重ねる。原発事故直後は放射線への不安が募り、東京に避難した。いわき市に戻った後もしばらくは実家で取れた野菜の放射性物質濃度を検査したり、家の周りの放射線量を測ったりした。今は、不安はほとんどない。積み重ねた「安心」が、自分を支えているためだ。

 甲状腺検査を全て理解しているわけではない。継続した検査が大切なことは初めて知ったし、正直に言えば不安も残る。「もし子どもが『がん』と言われた時、冷静でいられるだろうか」

 不安度「6」から「2」

 同じ説明会に参加した同市の主婦藤田敦子(42)は甲状腺検査のアンケートで、自身の「不安度」を10段階で評価する欄に説明会前は「6」と記入。しかし、説明会後には「2」と書いた。「今までは『がん』の響きに不安があったが、説明を聞いて安心できた。こうした積み重ねが大事なんだろう」(文中敬称略)