【 甲状腺検査(4) 】 独自検査で町民納得

 
【 甲状腺検査(4) 】 独自検査で町民納得

独自検査をしている浪江町の国保仮設津島診療所=二本松市

 放射線の影響、検査間隔、「がん」という響き--。福島医大の甲状腺検査とは別に、独自の甲状腺検査を行う浪江町の国保仮設津島診療所(二本松市)には、さまざまな不安を抱えた町民が足を運ぶ。「町民としっかり向き合うことが大切」。検査に携わる医師関根俊二(72)の言葉に実感がこもる。

 延べ1000人以上受ける

 同町の独自検査は、医大の検査間隔(20歳まで2年、それ以降は5年)に対する町民の不安解消のため、2012(平成24)年夏に始まった。検査対象は当初、医大と同じく原発事故発生時に18歳以下の人だったが、現在は40歳以下。対象者は予約すれば何度でも検査を受けられ、延べ1000人以上が検査を受けている。

 子どもと保護者が診療所を訪れ、関根が子どもの喉にエコー検査の機器を当てる。画像を見ながら、しこりや体液がたまる小さな袋(嚢胞(のうほう))の有無を確認、「小豆粒ぐらいだね」「これなら安心しても大丈夫」などと語り掛ける。保護者らは少し表情を和ませて帰っていく。

 関根によると、独自検査の当初は、放射線の影響に不安を持つ人が多かった。ただ、環境省が青森、山梨、長崎3県で行った甲状腺検査の結果を一昨年春に公表、しこりや嚢胞の見つかる割合が本県と比べて差がないとデータを示したことで、そうした不安を訴える人が減ったという。

 国や県への不信感

 ただ、原発事故で北西方向に逃げ、この地域の放射能汚染を後で知った多くの浪江町民は、国や県への不信感が根強い。関根も「検査自体が信じられない」という町民の思いを感じることがある。

 福島市に避難する同町の渡辺広志(68)は、中学3年生の孫諒雅(15)に医大の検査ではなく、二本松市まで出向いて同町の検査を受けさせている。「医大を信じられないが、検査自体は受けた方がいい」と思うからだ。

 独自検査の受診者数は年々減っている。これまでの成果もあり、「不安が和らぎ、医大の検査間隔で大丈夫と思う人が増えてきている」と関根はみるが、「検査に納得してもらうため、きめ細かな対応は今後も必要」とも考えている。(文中敬称略)