【 地域へのまなざし(2) 】 学校軸に小国再生へ

 

 「あっ、ついた」「飛行機みたい」。3月9日、伊達市霊山町の小国小の教室。講師がメタン発酵で生じたガスに火を付けると、「スターリングエンジン」と呼ばれる装置が作動、発光ダイオード(LED)ライトが点灯した。子どもたちから驚きの声が上がる。

 「暗いイメージ心配」

 再生可能エネルギーの活用などにより小国地区の再生を目指す団体のメンバーが、同校の5、6年生を対象に行った出前授業。「子どもたちには今、小国でしか学べないことを学んでほしい。地域に対し、震災、原発事故による暗いイメージばかり持つようでは心配だ」。団体のメンバーで、地元の交流館の館長も務める大沼豊(71)は授業の狙いを語る。

 原発事故が地域コミュニティーに与えた打撃は大きかった。地域は、空間放射線量が一定の水準を超えるとして、政府が避難を支援する「特定避難勧奨地点」に指定された世帯と、指定されない世帯とに分かれた。賠償などをめぐりあつれきが生じた。「大人同士がぎくしゃくした関係だったから、影響を受ける子どもたちはかわいそうだったなあ」。大沼は振り返る。

 大人たちの気持ちを再び一つにしたのは、学校だった。「子どもたちが思う存分学べる環境づくりを進めよう」。小国小が目標を掲げると、地域住民は率先して校庭の草むしりやプール掃除に取り組んだ。「『学校のため、子どもたちのためなら』と活動する中で、わだかまりも小さくなっていったのでは」と、校長の鈴木久(56)には思える。

 再生に向かう地域が今抱えるのは、除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設への「輸送」をめぐる問題。輸送ルートに設定された国道は、同校から近い。「子どもの通学時間の輸送はやめてほしいと思っている。要望は聞いてもらえるだろうか」。鈴木は、環境省や県の議論の行方を見守る。

 出前授業学び深める

 原発事故が今なお影を落とす中でも、子どもたちは地域からの学びを深めている。出前授業に参加した佐藤琉偉(るい)(12)は、本県が原発事故後、再生可能エネルギーを推進していることを知っている。「もし実現できるなら、地球に優しいエネルギーを増やしていくべきだと思う」と、授業の感想を語った。(文中敬称略)