【 地域へのまなざし(5) 】 「寺子屋」一緒が楽しい

 

 「すごい集中してるね」

 「そう?」

 3月30日、伊達市保原町の富成地区交流館。富成小の菅野優希菜(10)は友達に声を掛けられても、算数の問題を解くのをやめなかった。

 この日は、春休みに合わせて「寺子屋教室」が開かれた。県内外から集まる大学生が子どもたちに勉強を教えるなど交流を深める。工作の時間や「お遊びタイム」と題した自由時間も設けられ、交流館には歓声が響いた。

 ここに来れば会える

 「みんなと一緒に勉強したり遊んだり。とっても楽しい」。優希菜がそう話す背景には、中山間地域が抱える特有の事情もある。

 「女の子の友達の家は自分の家からちょっと遠いので、普段は一緒に遊びにくい。でも、ここに来ればみんなに会えるんです」

 県内の多くの地域と同様、富成も少子化が進む。「子どもたちが家に帰った後、近所の子どもたちと遊ぶということが、今はなかなかない」。富成小校長の橋本一弥(51)は現状を語る。

 加えて、原発事故の影響がある。富成の一部は、かつて、空間放射線量が一定の水準を超えるとして政府が避難を支援する「特定避難勧奨地点」に指定されていた。地域からは、放射線の不安や家庭の事情で「区域外就学」を望む家庭も出た。

 児童数、震災前の半分

 同校の本年度の在籍児童は30人。震災、原発事故の直前の2010(平成22)年度在籍数61人と比べて半減している。橋本は「地域の人が『(10年当時は5年後の15年度に)少子化で50人ぐらいには減っているだろうと予測していた』と話していた。その予測より少子化が進行しているのが現状だ」と影響を語る。

 原発事故が少子化を進展させ、将来の課題を「先取り」する格好となった地域。「課題先進地」として、外部から注目される状況も生まれた。

 子どもたちと地域の関わりはどうあるべきか--。関係者の模索は続いている。

 寺子屋教室を企画したのは、同市地域おこし支援員の小林誠(38)。大学生との交流を通じて、子どもたちに将来への目標を持ってもらいたいと考えるが、小林が目指すのは地域住民が共に子どもを育てる社会だ。「いろんなことができる人生経験のある地域の人たちに、子どもたちの『先生』を務めてほしい」(文中敬称略)