【 被災をバネに(7) 】 "キャリア支援"柔軟に

 
【 被災をバネに(7) 】 

「震災後の状況を前向きに捉えられる支援が求められる」と語る今泉特任助教

 震災後の子どもたちの進路をめぐる県内の現状や課題について、福島大うつくしまふくしま未来支援センター若者キャリア支援担当の今泉理絵特任助教(45)に聞いた。

 将来像を描き直す

 --県内の子どもたちの進路に関する現状は。

 「震災と原発事故で地元企業が被災し、生活基盤も変化した。避難区域に指定された地域では、地元に住んでいれば描けたはずの将来像が、失われてしまった。地元企業と学校が連携したキャリア教育(自立して自分らしい生き方ができる力を身に付けさせる教育)など、キャリアを形成する場としての『地域』もなくなり、将来を描き直すことが必要な状況だ。一方、キャリア形成の問題を考える時、それが震災で発生したのか、あるいはもともとの課題に拍車が掛かったのかを検討し、適切に対応する必要もある」

 --震災や原発事故が子どもたちに与えた影響は。

 「原発事故から4年余りが経過し、個々の課題があるにしても、教員の努力もあって教育現場は落ち着いてきた。震災の影響をたくましく乗り越え、進路を選択している子どもが大半のように感じる。ただ、震災後の混乱の中で十分な検討ができないまま就職し、早期離職するなど環境にうまく対応できなかったケースも散見される。どう支えていくかを考えていく必要がある」

 --高卒者の進学状況は。

 「地元から離れたサテライト校では、特に専門学校や大学への進学率が若干上昇し、就職率が低下しているデータがある。新たな環境で進学の選択肢が増えたことは好ましいが、内情はさまざま。視野が広がり、積極的に夢の実現のために進学する場合もあれば、『これといった就職先がないので進学する』『進学後にゆっくり就職を考えたい』といった選択もみられる」

 可能性広げる好機

 --現状を踏まえた今後のキャリア支援の在り方は。

 「復興が変化とともに進むことを考えれば、将来設計を立てても、常にそれを見直しながら変化に柔軟に対応していくことが望ましい。新しい土地の暮らしや出会いは困難だけでなく、可能性を広げるチャンスでもある。今の状況を前向きに捉えられるようなキャリア支援が求められている」=「被災をバネに」おわり