【 放射線教育(1) 】 薄れる関心に"危機感"

 

 「『ほうしゃせん』って、よく耳にはするけど...」

 5月19日、郡山市の桑野小。「除染情報プラザ」の協力で行われた放射線の授業で、学校周辺の放射線量を測定した畠山心(11)は、授業を受けるまで放射線に興味がなかった。

 原発事故後しばらくは「土を触ってはだめ」と親から注意されたが、今はそんなことはない。街中にある空間放射線量表示板を見ても「数字をどう読んでいいか分からない。『あ、またあった』くらいの印象だった」

 「ちゃんと聞けよ」

 授業を担当した同校教諭の坂内智之(46)は「時間の経過とともに子どもの放射線への意識は薄れる。教えるのが難しくなっていくだろう」と考えている。

 「ちゃんと聞けよ」。相馬地方などで内部被ばく検査に携わる東大医科学研究所の医師坪倉正治(33)は2月、放射線の授業を行うため同地方の高校を訪れていた。おしゃべりをやめない女子生徒を注意すると、うっとうしいものを見るような目を向けてきた。「放射線なんて怖かねえんだよ」。女子生徒が授業後に提出したとみられるアンケートには、そんな趣旨のことが書いてあった。

 「放射線への子どもたちの反応は今、三つに分かれる。声には出さないが不安を感じているグループ、『まあ、大丈夫でしょ』ととらえているグループ。残りは、放射線の話なんて聞きたくない、うっとうしいと考えるグループ。年々関心は薄れ、話を聞く生徒は減っている」。4年が経過した現状を坪倉はそう説明する。

 内部被ばくに特化

 相馬市の桜丘小教諭の増子啓信(44)は、子どもたちの関心の薄れに危機感を抱く一人。2013(平成25)年夏、知人の研究者のつてで、東京都の教員向けに開かれた放射線の研修会に参加した。「悪いけど、福島の物は子どもには食べさせない」と話す教員が多いことに驚いた。

 「子どもたちは自分の体、食べ物について説明できるのか」。その年の放射線教育は、内部被ばくに特化して行った。スーパーなどに並んでいる食品は検査済みで、食べても内部被ばくしないことをクイズ形式で伝えた。「これからが放射線教育の正念場」と感じている。

 桑野小の坂内は、放射線授業の締めくくりに子どもたちに呼び掛けた。「県外には『(原発事故後の)福島の子どもたちはかわいそう』と言う人がいる。だから、『浴びている放射線はこれくらいの量だから大丈夫』と、きちんと相手に伝える力が、あなたたちには必要なんです」

 心は、笑顔で語った。「放射線に少し興味を持つことができたと、おうちに帰ったら伝えたい」(文中敬称略)