【 放射線教育(2) 】 知識を伝える難しさ

 

 「私たちの被ばく線量と福島の人たちの被ばく線量とでは、どちらが高かったの?」

 「あなたたちの方が高かったんだ」

 今年1月、福島高の小野寺悠(17)は、インターネット電話「スカイプ」を使ってフランスのコルシカ島の女子高校生と放射線に関して英語で意見を交わしていた。相手は少し、驚いた様子だった。

 国内外の線量比較

 震災、原発事故後、県内ではさまざまな形で放射線教育の取り組みが続いている。悠が所属する同校スーパーサイエンス部は、国内外との比較を通じて本県の現状を明確にしようと、東大大学院教授の早野龍五らと線量評価を試みてきた。その一環で、国内外の高校生ら約220人に2週間、線量計を持ってもらい、数値を比べる研究を行った。

 参加した各校では、それぞれ10人ほどが協力、その5、6番目程度で中間に位置した生徒の値を1年間分に換算し比べた。その結果、本県では年間0.63〜0.97ミリシーベルトとされたのに対し、国内のほかの学校は0.55〜0.87ミリシーベルト、海外は0.51〜1.10ミリシーベルトで、本県とほとんど変わらなかった。同校によると、コルシカ島は地表に花こう岩が多く、その影響で自然放射線量が比較的高いという。

 理解してもらえた

 研究成果については3月、フランスで開かれた国際高校生放射線防護会議で報告した。会議の前には海外の人から「福島に住めるの?」などと聞かれたこともあったが、報告を通じて悠は「理解してもらえた」と感じた。「海外ではまだ事故直後の『フクシマ』のイメージ。相手が持っている情報が少なかった分、いっそう伝わった」と振り返る。

 原発事故から4年が経過し、事故による放射線の影響を科学的に判断できる材料は増えている。一方、根拠が薄い、いたずらに不安をあおる情報もまだある。同部の斉藤美緑(16)、安斎彩季(16)は放射線の知識を別の人に伝える難しさを感じる。「いろいろな考えがあり繊細な問題。『自分はこう思う』と話しづらい雰囲気がある」。だからこそ、客観的なデータを示すことが大事と考えている。

 同部は線量の研究を論文として発表する準備を進めている。悠は伝える難しさを感じつつ「それでも発信し続けることが、自分に今できること」と言い切る。(文中敬称略)