【 放射線教育(3) 】 他県ではひとくくり

 
【 外遊びと発達(3) 】 他県ではひとくくり

西郷二中で行われた放射線の授業。矢ケ崎君(中央)は日本のエネルギー政策についてグループで議論した=5月28日、西郷村

 「ここでは、検査は必要ないんじゃない?」

 只見町の朝日小で昨年度行われた放射線の授業。田植え、稲刈りなど授業で米作りに取り組んだ5年生のある児童は、県内全域で行っている米の全量全袋検査について意見を述べた。

 必要性に疑問の声

 東京電力福島第1原発から直線距離で約150キロ離れた同校。教頭の高原昇(50)は「南会津地域は放射線量が低い。昨年度、放射線教育を始めた際、保護者からも『必要あるのか』という声が上がった」と振り返り、こう続ける。「だが進学や就職などで他県に出れば、南会津出身でも『福島県出身者』としてひとくくりだ。聞かれたらしっかり説明できるよう、放射線への知識は欠かせない」

 昨秋、5年生の児童らは自分たちが作った米を全袋検査の検査場に持ち込んだ。「只見町の米も確実に検査をやっているから安心・安全と言えるんだ」。当初は検査が必要ないと考えていた児童らも、安全性を外部に示すために厳しい放射性物質検査が行われていることを学び、そんな感想をまとめた。

 生活影響に地域差

 放射線教育は県内全地域で取り組まれているが、原発事故がもたらした子どもたちの日常生活への影響は、地域によって差がある。地域の実情に応じた教育をどうするか、学校現場の試行錯誤が続く。

 「原子力発電所の利点はなんですか?」。西郷村の西郷二中では5月28日、日本のエネルギー政策の在り方を議論する授業で、教壇に立った渡辺祐介(37)が生徒たちに問い掛けた。

 「温室効果ガスが出ない」

 「では欠点は?」

 「事故が起きると放射能が出る」「甲状腺検査を受けなくてはいけなくなる」「ガラスバッジが必要になる」。次々と声が上がった。

 「放射線教育に取り組む前は甲状腺検査も『面倒』と考えるなど、原発事故の影響を受けた当事者という意識のない生徒が多かった」。渡辺は昨年度、生徒たちに放射線の基礎的な知識などを教えた。

 その下地があるからこそ、本年度は県民の目線でエネルギー政策を議論できていると渡辺は考える。

 矢ケ崎理人(14)は授業後、これまでの放射線教育への感想を語った。「最近は放射線について気にすることはなくなったけど、学んだことはいつか役に立つんだと思う」(文中敬称略)