【 白河市・きつねうち温泉 】 新しい自分に化ける お稲荷様が歓迎

 
木々に囲まれ、静かな時が流れる露天風呂。なめらかな湯の質は、美肌の湯の名にふさわしい

 穂を垂らす田園景色を横目に白河市の中心市街地から車で約20分。山あいを抜け、美しい里山が広がる同市東地区(旧東村)に「きつねうち温泉」はある。

 「きつねうち」は同地区の民話に由来する「狐内」という地名から名付けられた。かつて温泉付近に寺があり、住職が猫と暮らしていた。その猫が和尚の僧衣を着て、キツネに化けて夜な夜な別のキツネと踊り明かしていたという話が地名の起源とされる。温泉施設の入り口には、お稲荷様などが設置されているほか、施設内の食事では油揚げを使用する逸品もあり、とにかく"キツネ推し"の地区だ。

 うたい文句は「つるつる すべすべのやさしい美肌の湯」。とろみを感じる肌触り、淡い黄色の湯はアルカリ泉質の水素イオン濃度(pH)9.3。神経痛や疲労回復などに効果があるとされ、保湿や保温効果も高い。温度設定は41度程度。1年を通じて満喫できるように温度管理されている。

 赴任した当時、白河に対する勝手な先入観から温泉のある日常を予想していなかった。「湯の質が素晴らしい。だまされたと思って入ってみて」と知人から紹介を受けてはや2年。今ではなめらかな湯にどっぷりとはまり、週1回は通う常連客に"化けて"しまった。

 平日昼間の露天風呂。木々に囲まれ、雲が流れていくさまは喧騒(けんそう)を忘れさせる。夜は月明かりの下、虫たちの声が心地よい。内風呂は自宅で味わえない開放感。サウナでは、仕事終わりの男たちが世間話に花を咲かせ、水風呂で一日の疲れを流し去る。

 ◆ヨガで健康増進

 同温泉は「美肌の湯」のPRと、市民らの健康増進を図る屋外ヨガを融合させたイベント「Shirakawa 『美』と『健康』 チャレンジング」を昨年からスタートさせた。県外から著名ヨガ講師を招き、「心も体もきれいになる」と参加者から好評だ。

 1994(平成6)年にオープン、2015年に新装開館した。市内の温泉施設や旅館の中では比較的新しい。東日本大震災で大量に発生した建築廃材を燃料として再利用を図る「バイオマスボイラーシステム」を導入しており、湯の加温に使うなど独自の事業を展開する。

 施設の周辺には、ソフトボールコート4面分のグラウンドをはじめ、テニスコートや弓道場などが隣接し、学生の合宿などさまざまな用途に対応。同温泉には宿泊用のコテージや和室も完備し、休日は大会に出場した子どもたちの声でにぎわうこともある。

 「毎日入りに来る方もいる」と坂本敏昭支配人(61)。マッサージや地元産の食材を使った料理を提供し、地元住民の心をつかんでいる。近くを通った際は「美肌の湯」で癒やしのひとときを過ごしてみてはいかがだろうか。

 【メモ】きつねうち温泉=白河市東釜子字狐内47。日帰り入浴700円(午後5時以降は500円)。タオルなど別料金。

白河市・きつねうち温泉

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 【幕末創業の愛される菓子店】きつねうち温泉から南へ車で約5分、地元住民に愛され続ける菓子屋・坂本屋総本店がある。1862(文久2)年の創業。店を構える白河市東釜子地区は江戸時代、越後高田藩(新潟県)の飛び領地であったため、同店はその流れをくむと伝わる。創業から受け継ぐ「おきな餅」(16枚入り、税込み540円)は水あめや寒天などを材料にした和菓子で、歴史を感じさせる趣深い味わい。もちもちとした食感と、あんこたっぷりの「きつねうち温泉まんじゅう」(税込み130円)も人気の一品。6代目の我妻栄一さん(59)は「旅行の土産話にしてほしい」と笑顔で話した。

白河市・きつねうち温泉

〔写真〕おきな餅(左)ときつねうち温泉まんじゅう