【 郡山市・のんびり温泉 】 日常を忘れるパノラマ 掘り当て夢実現

 
四季折々の景色が楽しめる「パノラマ大露天風呂」。眼下には安積平野が広がる

 二十四節気の一つ「小雪」が過ぎ、朝晩の冷え込みが冬の訪れを感じさせる。せわしい年の瀬の前だというのに、日々の仕事は多忙だ。「どこかでのんびりしたい...」。そんな気持ちにピッタリの温泉施設があった。「のんびり温泉」。今の気持ちを反映したような名前だ。

 郡山市中心部から西に車を走らせること約20分。行き交う車は徐々に減り、周りには田園風景や紅葉が広がる。

 1999(平成11)年11月にオープンした施設は、同市三穂田町の小高い丘にある。「この地域で雪が積もらない場所がある」。そんな話を聞いた茨城県の倉庫会社会長の前山健一さん(77)が「自分が掘った温泉に入りたい」という夢を実現させるため掘削、地下800メートルで掘り当てた。湧き出す温泉の泉質は硫酸塩泉で、塩分が多く、入浴後は汗の蒸散を防ぐため保温効果や保湿性に優れているとされる。

 午前中にもかかわらず、地域の住民が訪れていた。夏場には、東京、メキシコ両五輪金メダルの三宅義信さんが敷地内に開設したウエイトリフティングのトレーニング施設「三宅道場」を利用する日本代表選手らも訪れ、心身の疲れを癒やすという。

 ◆地元産のそば粉 

 玄関を入るとフロントの上には「パノラマ大露天風呂」と大きな看板が。マネジャーの大橋茂之さん(36)によると「夏は新緑、冬は雪。四季折々の景色が楽しめる」のが"売り"だ。

 「では早速」とパノラマ大露天風呂に入浴してみる。柔らかい日の光が差し込み、眼前には安積平野を望む雄大な景色が広がる。温度は40~41度と入りやすい。「週末になると家族連れも多く、入りやすい温度設定にしています」と大橋さん。時の流れを感じさせず、静寂の中で癒やしの時間を過ごすことができた。ほかにも露天風呂や大浴場、ジャグジーがあり、四季を満喫できる。

 昼時が近くなり、空腹を満たそうと施設内にある「レストラン東山」へ。注文するメニューは決めていた。前山さんが春先に北海道で収穫してきたという行者ニンニクを使ったラーメンだ。

 だが、行者ニンニクは売り切れとなっていた。数に限りがあり、現在は販売していないことを知らされ、ガックリと肩を落とす。そうすると大橋さんが、バラエティー豊かなメニューの中から、同市湖南町産のそば粉を使ったそばを勧めてくれた。そばは手打ち。注文した「鶏きのこつけ汁そば」は、香り高く心地よいのど越し。つけ汁にはシイタケやマイタケ、シメジの3種類のキノコをふんだんに使っていることを料理長の富沢一浩さん(54)が教えてくれた。

 喧騒(けんそう)を忘れさせてくれる空間を離れ、帰途に就く。車中では施設名にある「のんびり」とした時間に思いを巡らせた。

 【メモ】のんびり温泉=郡山市三穂田町山口字山崎山11の1。日帰り入浴は平日で大人600円(土、日曜、祝日800円)、4歳~小学生300円(同400円)。

郡山市・のんびり温泉

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 【かわいいアルパカに会える】のんびり温泉から車で約15分。のんびりアルパカ牧場では、かわいらしいアルパカが来場者を出迎え、心を癒やしてくれる。アルパカは東日本大震災後、新潟県の旧山古志村(現長岡市)の牧場から「被災した県民に元気を提供したい」と譲り受けた。現在は約30頭を飼育しており、人なつっこい性格だ。 このほか、ミニチュアホースやヒツジと触れ合いを楽しめるほか、イワナの釣り堀もあり、釣ったイワナを炭火焼きで食べることができる。敷地内に開設したカフェやパン店も人気だ。同牧場は年中無休で、入場無料。営業時間は午前9時~午後5時。

郡山市・のんびり温泉

〔写真〕かわいらしいアルパカと触れ合える「のんびりアルパカ牧場」