【 郡山市・温泉天国さくら湯 】 掛け流し!すぐ行ける街の『極楽』

照りつける太陽が本格的な夏の訪れを感じさせる郡山市。市街地では夏休みに入った子どもたちや、会社員がシャツの袖をまくり上げて歩く姿が目立つ。慌ただしい日々を過ごす中で、一つの願望が芽生えた。「近場で本格的な温泉にゆっくり入りたい」
そんな願いをかなえる温泉があると聞きつけ、車を走らせた。場所はJR郡山駅からさくら通りを西へ約4キロ。新緑に囲まれた開成山公園を過ぎて、狭い路地に入ると「温泉天国さくら湯」と、ひっそりと掲げられた看板が見えてきた。
玄関に入ると、さくら湯を経営するアイヅホールディングスの小山敏夫社長(75)が出迎えてくれた。「うちの温泉の自慢は『源泉掛け流し』。街中で源泉を惜しみなく使って湯船につかれる温泉はなかなかない」。県内外で温泉旅館などを経営する小山社長が2016(平成28)年、以前からあった温泉施設を引き継いで開業した。市街地なのに「源泉掛け流し」との文言に何ともぜいたくな気持ちになり、温泉好きの血が騒ぐ。
◆静かに過ごせる
いざのれんをくぐると、午前中にもかかわらず常連客が湯船につかり一息ついていた。大浴場、露天風呂、サウナ、水風呂と設備も十分。お目当ての露天風呂に向かう。市街地にあるため、さすがに自然豊かな絶景とはいかないが、植え込んである松やキンモクセイが和の雰囲気を醸し出す。「では、失礼します」。一面透明な湯に入る。泉質は硫酸塩泉で、水素イオン指数(pH)は8.8。肌に吸いつくような独特のぬめりがあるのが特徴。源泉は45度だが、温泉は41~42度で、ゆっくりつかるにはちょうどよい。
聞こえてくるのは風に揺れる木々の音や鳥のさえずり。肩の力が抜け、体から疲れが抜け出ていくようだ。温泉から上がると体が軽く感じた。同市の温泉ソムリエ・渡辺良雄さん(72)によると、「(さくら湯は)毎分200リットルを湧出する近くの源泉から直接引いてくるので、温泉が酸化しにくいのが特徴。全身の疲労回復や肌の美容効果も期待される」という。
市街地だけに客層はさまざま。朝は開店を待ちわびる常連客の姿が、昼間は地域のお年寄りが温泉を楽しんだ後、2階の大広間で会話を楽しむコミュニティーの場に。夜は仕事帰りの会社員が疲れを癒やしに来る。温泉好きのファンも市外から訪れる。ロビーで休憩していた三春町の会社員渡辺明さん(51)は「なめらかな湯で気持ちいい。市街地にあるのに静かに過ごせるのが魅力」と話した。
「『よい温泉だね。これからも続けてね』と言われるのがうれしい。日ごろの疲れを癒やしていただければ」と小山社長。夏は疲れがたまりやすい。市街地にありながら、喧騒(けんそう)を忘れられるこの場所に、しばらくお世話になりそうだ。
【メモ】温泉天国さくら湯=郡山市島2の7の6。入浴料は大人(中学生以上)600円、小学生300円。未就学児は無料。年中無休。
≫≫≫ ほっとひと息・湯のまちの愉しみ方 ≪≪≪
【笑顔になれる本やおもちゃ】子どもがいる家族におすすめの場所がある。さくら湯から車で5分ほどの距離にある、子ども向けの絵本やおもちゃを販売する「カシオペイア」だ。店主の千葉義行さん(69)が自身のうつ病の体験を生かし、「子どもから大人まで笑顔になってほしい」と開店。千葉さんが選定した約千冊の"笑顔になれる"絵本や児童書、自然素材から作られた木のおもちゃなどが店頭に並ぶ。アニメ映画「千と千尋の神隠し」の主題歌「いつも何度でも」の伴奏などでも使用された珍しい弦楽器「ライアー」の販売や演奏教室、子育ての悩み相談も行っている。
〔写真〕多彩な本に囲まれた中で、ライアーを演奏する千葉さん
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