【 福島市・飯坂温泉 】 個性豊か3種の源泉 水深き「立ち見の湯」

 
水深が深く立ったまま入ることができる「立ち見の湯」

 福島市で生活するようになって1年超。毎月1回欠かせないお気に入りの場所がある。同市飯坂町の「飯坂ホテル聚楽(じゅらく)」だ。「癒やし」を求め、車を走らせた。

 JR福島駅から約20分、果物畑の先に飯坂温泉街が見えてくる。胸の高鳴りを抑えつつ摺上川に沿って緩い坂を道なりに進むと、お目当てのホテル聚楽に到着した。

 早速、温泉に直行。畳が敷かれた廊下を進み、温浴施設「いいざか花ももの湯」を案内してもらった。日帰り施設としても親しまれている大浴場で、数種類の温泉を楽しむことができる。

 案内してくれた販売促進課の遠藤歩希(あゆき)さん(24)は「泉質の異なる3種の源泉が一つの施設で楽しめるのはここだけ」と誇らしげに教えてくれた。

 男女別に、内湯が4種類、露天風呂が3種類、そして、サウナがそれぞれ設けられており、広くてゆったりくつろげる。3種類の源泉はそれぞれ、硫酸塩泉「延寿(えんじゅ)」、単純泉は「花月(かげつ)」と「坐忘(ざぼう)」と名付けられている。

 湯の温度は40~43度。いざ湯巡りへ。まずは花月から引かれた「もみほぐしの湯」から。少し濁った湯は体の芯からじんわりと温めてくれた。次に延寿から引かれた、個人的に一番のお気に入りの「立ち見の湯」。水深が深く、立って入る。人工滝のせせらぎに耳を澄ますと疲れがとろけて落ちていき、まさに「湯に抱かれている」感覚になる。最後は坐忘から引かれた「寝転びの湯」で横たわる。湯に半身つかる形で、湯の温かさをいっそう感じた。それぞれ温度が違うため、好みの温度を楽しむことができる点も魅力の一つだ。

 ◆モンローの気分

 湯から上がり、幸せな気持ちでロビーを歩いていると、マリリン・モンローのパネルと出会った。そこはかつてテレビで流れていた「懐かしCMコーナー」だった。「なぜ、モンロー?」。千葉県出身の私には初めは理解できなかったが、ある程度の年齢以上の県民にとってはおなじみのCMと聞いた。CMのモンローは、そっくりさんだが、「聚楽よ~」との色っぽい声が印象的。この映像は多くの県民の記憶に強烈に残っていることだろう。

 開業は1967(昭和42)年。当時は館内にボウリング場やステージが設けられていたが、時代の変遷とともに館内も変化した。現在は家族連れの宿泊客が多く、毎日開催される餅つき大会や、館内でのクイズラリー(期間限定)を楽しむ。そして、調理している姿を見ながら出来たての料理を味わえるライブキッチンも迫力満点だ。

 建物は現在、大規模改装が進められている。少人数で宿泊できる部屋を増やし、来年3月のリニューアルオープンを目指している。開業から半世紀。新たな装いも楽しみだが、帰路でまず頭に浮かんだのは「またすぐ来よう」という思いだった。

 【メモ】飯坂ホテル聚楽=福島市飯坂町西滝ノ町27。日帰り入浴は中学生以上1380円、小学生700円、未就学児500円、2歳以下無料(他のプランもあり)

福島市・飯坂温泉

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 【地元産果物使ったグラノーラ】ホテル聚楽から歩いて約5分の場所に「湯のまち いいざか グラノーラ工房」がある。地元で栽培された果物を乾燥させ、麦とメープルシロップを合わせて焼いたグラノーラが女性を中心に人気を集めている。製造は全て店内で行っており、低温で乾燥させることで果物の甘みを閉じ込める。ヨーグルトなどと合わせてサクサクとした食感が楽しめる。店主の高橋健さん(38)は「飯坂のおいしい果物をお土産に、手軽に味わって」と来店を呼び掛けた。時間は午前10時~午後4時。木曜定休。

福島市・飯坂温泉

〔写真〕「低温乾燥で引き出した果物の甘みが自慢」と話す高橋さん