【 会津若松市・芦ノ牧温泉(上) 】 幻想的!五感で楽しむ和と自然

8月下旬。まだ暑さが続く会津若松市の市街地を抜け、緑鮮やかな田園風景に囲まれた国道を、ひたすら南へ車で走る。渓谷沿いにたたずむ目的地、芦ノ牧温泉にたどり着いた。
開湯は千数百年前、旅の僧侶が源泉を発見したという話が伝えられている。その僧侶は弘法大師、または行基上人とさまざまな説がある。深くは解明されておらず、温泉関係者も好奇心がくすぐられるロマンだ。温泉街はかつて、湯治場としてにぎわい、時代を経て観光の役割を持つようになった。その一つ、会津芦ノ牧温泉「大川荘」は1954(昭和29)年、阿賀川のすぐそばで創業、地域の人が阿賀川を「大川」と呼んでいたことからその名が付けられた。
◆川の流れを再現
館内に入ると滝の音が聞こえる。阿賀川の水を館内に引き入れて、川の流れを再現している。風光明媚(めいび)な自然を利用した会津らしいおもてなしだ。
「『和と自然』をコンセプトに、可能な限り木や石を使用しているんです」と玉川福男総支配人。ふと視線を移すとロビー一面に広がる窓から渓谷が見える。一押しの季節を聞くと「冬」という答え。雪が舞い上がる様子が美しく幻想的だと評判だそうだが、夏の深緑も十分に美しい。
◆棚田がヒントに
早速メインの温泉に入らせていただく。硫酸塩泉で水素イオン指数(pH)は7.5とほぼ中性。内風呂と露天風呂があり、自慢の露天風呂「四季舞台 たな田」に向かう。その名の通り高さが変わる3段に設置された風呂で、農家の棚田から着想を得たという。最上段の温度が一番高く、下にいくにつれ湯温が下がるが、湯船に注がれる湯はそれぞれ別。つまり、上の風呂であふれた湯が下に流れ込むことはない。
屋根はヒノキ造りで、一帯は木の香りに包まれる。「暑い夏に、あえて熱い湯を」と思い、最上段から入ってみた。気持ちいい。が、長湯しようと真ん中に移動。渓谷の風景や木の香り、じんわり体に伝わる湯。目いっぱい自然を感じた。
「モンゴルから持ってきた石を使っているんです」と聞き、気になっていたサウナにも入ってみた。遠赤外線効果があるという麦飯石を全面に敷き詰めており、女性用は源泉を流したミストサウナになっている。
館内を歩いていると、開放的な雰囲気のお土産売り場を発見。会津の宿として地元のものを並べたいと、手ごろなものから高級品まで地場産品が並ぶ。中でも山塩を使用したオリジナルの山塩プリン(税込み380円)は5月から販売を開始した人気商品。ほのかな塩味が特徴で、汗をかいた後にぴったりの一品だ。
見てよし、聞いてよし、食べてよし。会津の魅力を五感で味わい、心も体も満腹になった。
【メモ】大川荘=会津若松市大戸町芦ノ牧字下平984。日帰り入浴はいずれも税込みで大人1500円、3~12歳は680円、2歳以下無料。
≫≫≫ ほっとひと息・湯のまちの愉しみ方 ≪≪≪
【開発に2年、こだわりのカレー】会津芦ノ牧温泉「大川荘」から徒歩5分。大川荘が運営するレストラン「DECCORA(でっこら)」は温泉客でにぎわう。人気メニューは開発に約2年かけたというこだわりの「会津芦ノ牧温泉カレー」(税込み850円)。具は手羽元だけとシンプル。スパイシーで一口食べるごとに額に汗がにじむ。手羽元は箸でほぐれるほど軟らかく煮込まれた絶品だ。日替わり定食(同720円)や会津煮込みソースカツ丼(同950円)などメニューも豊富で、カレー、定食、丼にはサラダバーも付く。大川荘で販売している山塩プリンも味わえる。営業時間は午前11時~午後3時(同2時30分オーダーストップ)。無休。
〔写真〕スパイシーな辛さが食欲をそそる会津芦ノ牧温泉カレー
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