【 福島市・高湯温泉(下) 】 湯屋をイメージ!古き良き風情に浸る

 
半分屋根に覆われた露天風呂。硫黄の匂いに心が落ち着く

 晴れ上がった秋の日、山岳道路を上って高湯温泉(福島市)の共同浴場「あったか湯」にやってきた。平日の午前中だったが、駐車場にはたくさんの車。県外ナンバーが多い。

 建物は昔の湯治の湯屋をイメージしたという和風建築で、浴場は半分ほどが屋根に覆われた半露天風呂。白く濁った湯につかる。硫黄の匂いに心が落ち着く。標高750メートルのひんやりした空気と熱めのお湯のコントラストも心地よく、他の入浴客との会話が弾んだ。

 高湯温泉唯一の共同浴場で、同温泉の旅館協同組合が運営。男女、貸し切りの三つの露天風呂がある。

 同組合事務局の今野剛(つよし)さん(58)が源泉を案内してくれた。浴場から60メートルしか離れていない。50.5度の湯は、湧き出した際は無色透明だが、空気に触れるなどして次第に白く濁る。高湯温泉の他の旅館と同様、一切手を加えない「源泉掛け流し」が特徴だ。

 浴槽までは木製の「湯樋(ゆどい)」で運ばれる。樋の中は、温泉成分が固まった「湯の花」で真っ白だ。「週に1回程度、湯の花を取り除く作業をしないと詰まってしまう」と今野さん。所々樋のふたが開いているのは、濃度が高まると危険な硫化水素を抜くためだという。

 ◆魅力知る入り口

  開業は2003(平成15)年。高湯の各旅館の日帰り入浴ができない時間帯をカバーする役割を果たしてきたという。県外から磐梯吾妻スカイラインに訪れるバイクの客や登山客、紅葉シーズンの観光客など初めて高湯に来た人が入浴し、高湯の魅力を知る「広告塔」(今野さん)としても機能する。紅葉シーズンは間もなく本格化。山々が鮮やかな色に染まり、高湯の観光客を楽しませる。

 高湯が県内外の人を引き付けるのは、そうした季節ごとの自然の彩りの魅力に加え、湯治場としての静かなたたずまいが残っているからだろう。

 今野さんや高湯温泉の資料によると、高湯はかつて農民が農閑期に食材を持って訪れ、長く滞在し農作業の疲れを癒やした湯治場だったという。日本中の湯街に華やかな歓楽街が設けられた高度経済成長期にも、高湯は「一切の鳴り物を禁ず」との昔ながらの習わしに基づいて湯以外の歓楽街的な楽しみを取り入れなかった。高湯では盆踊りも行われない。

 あったか湯の建物が湯治の湯屋をイメージしているのも、そうした歴史を反映した結果だ。

 来年7月、福島市で東京五輪の野球・ソフトボール競技が行われる。会場となるあづま球場からそう遠くない高湯温泉にも、観戦などのために来日した外国人が訪れることになるだろう。

 古き良き「湯治場」の雰囲気を今に残す高湯温泉は、外国の人たちの目にどう映るだろうか。

福島市・高湯温泉

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 【標高1200メートルから紅葉楽しめる】磐梯吾妻スカイラインに高湯温泉側から入り、しばらく上ると着く、紅葉の名所「つばくろ谷」。標高1200メートル。まだ緑色が目立つが、今月中旬ごろには赤や黄色に色づき、見ごろを迎えるという。つばくろ(イワツバメの別名)が飛び交うことからその名が付いた。架けられた不動沢橋は谷底からの高さ84メートル。橋の向こうには、福島市の街並みを見下ろす絶景が広がる。

福島市・高湯温泉

〔写真〕少しずつ色づき始めた「つばくろ谷」。紅葉は10月中旬ごろに見ごろを迎えるという