【 南会津町・古町温泉 】 火山か?とびきりの熱さも入れば『極楽』

 
赤褐色の温泉は熱めだが、慣れるとお湯が肌に染み渡る

 紅葉の季節が瞬く間に過ぎ去り、南会津に冬が到来した。「寒すぎる」。初めての会津勤務となった今年、凍える冬は温泉に限る。「体が芯から熱くなるよ」と知人から紹介され、南会津町伊南地区(旧伊南村)の古町温泉・赤岩荘を訪れた。中心街の同町田島から車で峠を越え、雄大な自然を満喫しながら温泉に到着。建物は質素なたたずまい。昭和レトロを感じさせる通路を抜け、湯船へと向かった。

 タオル一本の身支度を済ませ、男湯の扉を開けると目に飛び込んできたのは、赤褐色の露天風呂だった。「入って大丈夫なのか...」。一抹の不安を感じながら恐る恐る足を湯船に入れた。「あちっ!」。温度が高すぎて入ることができない。隣の露天風呂はさらに熱くて入れない。温泉の成分でできた浴槽の岩肌や「ボコボコ」と湧き上がる源泉はまるで火山だ。これまで数回、この企画「ふくしま湯けむり探訪」で記事を書いてきたが、「断念」の言葉が頭をよぎった。

 そんな時、地元の男性だろう。「熱くて入れないのか」と笑い声が響いた。南会津支局長として示しがつかない―と心に決め、一呼吸置いて一気に首までつかった。出たり入ったりを繰り返し、次第に温度に慣れるとお湯が肌に染み渡る心地よさ、爽やかな香りで極楽気分を体感した。

 ◆鉄分で赤褐色に

 「源泉掛け流しを楽しんでほしいんです」。同施設を運営するみなみやま観光の馬場友和さん(44)が説明してくれた。ぬるい湯船は42、43度、熱い湯船は46度を超えるという。赤岩荘の泉質はナトリウム―塩化物泉。水素イオン指数(pH)は6.5となっており、全浴槽無加水で切り傷や皮膚病などに効くとされ、保温に抜群の効果が期待できる。

 「源泉は元々透明のお湯なんです」と馬場さん。真っ赤なお湯の謎を明かしてくれた。実は温泉に鉄分が多く含まれているため、空気に触れると酸化し、赤く染まるのだという。源泉の注ぎ口や内風呂などを見てみると確かに透明のお湯が確認できた。

 同施設は伊南川沿いにあり、ゆったりとした時間が流れる。以前は河川敷の掘っ立て小屋で運営されていたが、河川の氾濫などに伴う拡幅工事で1972(昭和47)年ごろに現在の場所に移設されたという。伊南川の対岸には、伊達政宗の軍勢を迎え撃つために築城され、天然の要塞といわれた久川(ひさかわ)城跡がある。当時の武将たちもお湯で戦いの疲れを癒やしただろうかと、想像が膨らんだ。

 赤岩荘にはサウナなどはなく、自慢は「お湯」と「自然」。入浴客が「春は露天から見える桜、冬は雪見が最高だよ」と語ってくれた。帰路。赤信号で停車していた時だった。不意に香った温泉の甘い余韻が、再び心を落ち着かせた。

 【メモ】古町温泉 赤岩荘=南会津町古町字太子堂186の2。日帰り入浴(午前9時30分~午後8時)は、大人600円、小学生100円。水曜日定休。

南会津町・古町温泉

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 【特産トマトがラーメンに】赤岩荘につながる国道289号沿いにある道の駅「きらら289」では、南会津町の特産品やグルメが楽しめる。大盛りメニューの「わらじソースカツ丼」(1150円)や「トマトラーメン」(850円)、「南郷トマトロールケーキ」(1500円)が人気を集めている。紅葉などの季節には、バイカーや地域住民でにぎわい、温泉やサウナなども利用できる。同施設の酒井良男支配人(47)は「旅の疲れを癒やす場所にしてほしい。県内外のお客さまに南会津の良さを味わってもらえれば」と話した。営業時間は午前9時30分~午後8時。売店と温泉、食堂で営業時間が異なる。火曜日は温泉休業。

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〔写真〕南会津町の特産品などを手に来場を呼び掛ける酒井支配人