「Fukushima50」平田満さん リレーメッセージ(3)

 
 ひらた・みつる 愛知県出身。早大時代に知り合ったつかこうへいの舞台で活躍、映画「蒲田行進曲」で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した。主な映画出演作に「時代屋の女房」「北の零年」「裏切りの街」など多数。舞台、テレビなどでも幅広く活動。

 「Fukushima50」は福島原発事故を何とか最悪の事態から食い止めるまでのリアルタイムの映画です。子どもの頃から勝者のサクセスストーリーよりも、そうでない人たちの何ともいえない無念さと、人知れず味わう充足感が好きでした。この映画はまさに歴史の表舞台に立たなかった人間たちのドラマ。一も二もなく出演を決めました。

 大きな戦争や災害をドラマにすると、英雄の活躍とか涙を誘う美談、あるいは告発や問題提起になりがちです。福島に縁もゆかりもない僕にとって、そういう関わり方は荷が重いと思いました。俳優の仕事は、見てくれる人にいかに信じてもらえるか、自分にとってうそのない演技ができるか、だと思っています。自分が信じられる感情を他の人にも共有してもらえるよう、誰もが持っているささやかな勇気や責任感、後悔や怒り、そして友情や家族との喜びを精いっぱい感じようとしました。

 どこまで表現できたか分かりませんが、実際の技術者の方々の助言や共演者とのワンチームの団結、監督やスタッフの献身的な仕事のおかげで忘れられない作品になりました。

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