「決して風化させない」 映画・Fukushima50、東北3市で試写会

 
試写会に参加した渡辺さん(左)と椿プロデューサー=宮城・気仙沼市

 【気仙沼】 渡辺謙さん、椿プロデューサーあいさつ

 東京電力福島第1原発事故を描いたKADOKAWA映画「Fukushima50」(フクシマフィフティ)の試写会と舞台あいさつが24日夕、宮城県気仙沼市のホールであった。当時の第1原発所長・吉田昌郎(まさお)役を演じた俳優の渡辺謙さんと椿宜和(よしかず)プロデューサーが映画の見どころや撮影時のエピソードなどを披露した。

 渡辺さんは「津波のつらいシーンもあるが、決して風化させないよう全国の人に見てほしい作品。ホームタウンの気仙沼で上映できてうれしい」と話した。

 椿氏は「映画の企画は5年前からあったが、なかなか実現できなかった。日本を守るため福島や東北の人が立ち向かった人間ドラマをぜひ見てほしい」と呼び掛けた。

 東北での試写会開催は郡山、仙台、気仙沼の3市。東日本大震災後、気仙沼市内でカフェを経営し、住民と交流を続ける渡辺さんの意向もあり、開かれた。2回の上映に市民ら約150人が来場した。

 映画の原作は作家の門田隆将氏のノンフィクション「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発」。中央制御室や緊急対策室などのセットを再現し、事故対応に当たった本県の作業員たちの姿を描いた。

 【仙台】 佐藤浩市さん、若松監督あいさつ

 仙台市の東京エレクトロンホール宮城で24日開かれた試写会では、主演の佐藤浩市さんと若松節朗監督が舞台あいさつした。

 約1600人が参加した。若松監督は「事実を誠実に伝えたくて作った」とあいさつ。佐藤さんは、撮影で印象に残った事として富岡町の桜を挙げ、「桜の切なさとはかなさが映画のメッセージとリンクしている」と話した。 

 【郡山】 富岡町長ら見届ける

 郡山市の郡山テアトルで23日開かれた先行特別試写会では、震災と原発事故からの復興に取り組み続ける地元自治体や国の関係者も来場し、それぞれの思いで映画を見届けた。

 「臨場感があり、当時の切迫した状況がひしひしと感じられた」。富岡町の宮本皓一町長は映画の感想を話した。「中でも、満開の夜ノ森の桜の中でのシーンが強く印象に残った」と語った。その上で、宮本町長は「震災及び原発事故の風化が年々進む状況にあり、ぜひ多くの県民、そして全国の方々にご覧いただきたい」と訴えた。

 原発事故直後に本県に赴任して以降、第1原発の廃炉の最前線に立ち続けている経済産業省資源エネルギー庁の木野正登廃炉・汚染水対策官は「こんなに泣いた映画は人生で初めてだ。あの時、現場にいた人たちが命懸けで頑張ったからこそ、今があるのだと改めて思った」と涙ながらに語った。「日本だけでなく、世界中に発信してほしい映画だ」と力を込めた。