「Fukushima50」リレーメッセージ(13)緒形直人さん

 
 おがた・なおと 神奈川県出身。「優駿 ORACION」で日本アカデミー賞新人俳優賞、「わが心の銀河鉄道 宮沢賢治物語」で同賞優秀主演男優賞を受賞した。西田敏行と同事務所。父は緒形拳、妻は仙道敦子、母も兄も俳優の芸能一家で、長男敦も注目株。

 民謡「相馬流れ山」を口ずさむ場面があります。出演シーンの大半が動き回っていますが、あのシーンだけは静か。しかし原発内に残り、極限状態の現場に立ち向かった「フクシマフィフティ」一人一人の頭の中にはどの場面よりも、ありとあらゆる思いが駆け巡っていたのではないでしょうか。

 その根底には祈りが大河のように流れていたと思います。一人一人の思いを感じ取ってもらいたいです。

 撮影現場はものすごく緊迫感があり、とにかく集中力を切らないように心掛けました。場面ごとに対応に追われていくという激しさがある中で、吉田昌郎所長(渡辺謙)の行動と言葉を常に意識して演じました。

 原発事故から9年がたちましたが、現場の作業員には尊敬と感謝の思いしかありません。フクシマフィフティが対応に当たっていなければ絶対に今のような生活を送れていないですね。

 この作品が日本全体で考えるきっかけになると思います。廃炉作業が完全に終わるまでは長く険しい道のりですが、みんなで進んでいきたい。福島の皆さんと共に明るい未来を信じて。