【平成13年】うつくしま未来博 民話茶屋に脚光、「心の文化」を発信

21世紀の幕が開けた2001(平成13)年に須賀川市を舞台に開かれた「うつくしま未来博」。会場には企業未来館、未来のくらしの体験ゾーンなど多くのパビリオンに当時の最先端技術が結集する中、ひときわ光彩を放っていたのが「からくり民話茶屋」だ。「時代や変化に流されない『心の文化』を発信したかった」。語り部として参加した大玉村の後藤みづほさん(79)は「21世紀の始まりにふさわしい場だった」と振り返る。
後藤さんは1997(平成9)年、県が各地の振興局単位で各市町村の代表者を集めて開催した会議に、村代表として出席。出席者からは「ごみが増えるのでは」など未来博自体へ否定的な意見が出されたという。その中で後藤さんは「福島は表現がうまい県民性ではないが、先祖が残してくれた民話などを伝えて県民性を表現する場もあればいい」と提案。それが「民話茶屋」実現への第一歩だった。
◆語り部を養成
「なぜ博覧会で民話を」という声もあったという。それでも、先人たちの知恵や思いが込められた民話を一つのパビリオンにすると決まると、実行委は県内各地で講習会などを開き、地域の民話を語る語り部を養成。未来博期間中の86日間で227人の語り部が民話を披露し、同パビリオンへの来場者は当初目標としていた20万人を大きく上回る57万717人に上った。最も優れた展示に贈られるジャパンエキスポ大賞も受賞。かやぶき屋根の民家で連日披露される民話を楽しみに訪れる来場者は、後を絶たなかった。
「土間にあふれるような人々が集まり、起こる大きな声援。民話が届いてると感じてうれしかった」と後藤さん。話し終えて、ニコッと笑う来場者の顔を見るたび「よし、やった」と充実感を得たという。
後藤さんは語り部として活躍する一方、地域交流館では地域の歴史などに焦点を当てたシアターあだたらの主宰としても上演を行い、人気を集めた。現在は同村にある「森の民話茶屋」の店主として、地元産の食材をふんだんに使った料理を振る舞い、希望があれば民話も披露している。地域の主婦らと一緒に切り盛りし、未来博開催前に開店した店は今年、20年の節目を迎える。「私の役割は民話の良さを伝えること」。未来博で得た自信が、現在も糧になっている。
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うつくしま未来博 2001(平成13)年7月7日から9月30日まで、須賀川市を会場に初めて森の中で開催された地方博覧会。「美しい空間 美しい時間」をテーマに、自然との共生、県民参加を目指した多彩なイベントが繰り広げられた。入場者数は165万7002人に上った。
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【平成13年の出来事】
1月・奥羽大で歯科医師国家試験問題漏えい事件
3月・安積高が新設の21世紀枠でセンバツ出場
5月・いわき市の大黒屋が破産宣告を受けて閉店
7月・うつくしま未来博開幕
・三春町の玄侑宗久さんに芥川賞
〔国内・海外〕▼皇太子ご夫妻に長女・愛子さまが誕生▼東京ディズニーシーがオープン▼首相に小泉純一郎氏▼米同時多発テロ
〔流行語〕「聖域なき改革」「抵抗勢力」「DV」
〔ヒット曲〕桑田佳祐『波乗りジョニー』B'z『ultra soul』
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