【平成20年】安積黎明高コーラス部30回目「金」 『合唱王国』に金字塔

 
伝統の柔らかな歌声を受け継ぐ安積黎明高コーラス部

 郡山市が「音楽都市」を宣言した2008(平成20)年、全国でも屈指の合唱の名門校安積黎明(旧安積女)高は、日本最高峰の全日本合唱コンクールで、節目となる30回目の「金」を受賞した。40年近くにわたる活躍で「合唱王国」としての本県の歴史をつくり、県内の音楽文化をリードしてきた同校コーラス部。長い歴史をかけて培われた伝統は、音楽を愛する一人一人の思いがつないだ結晶だ。

 「入部したての新入生でも、1週間もすると安女の響きになる」。安積女高時代の1987~99年の12年間、タクトを振った全日本合唱連盟理事の菅野正美さんは、ウグイスに例えてこう説明する。「鳴くのが下手なウグイスも、上手なウグイスと一緒にかごの中に入れておくと、同じ声で鳴き始める」

 昭和から平成にかけて、求められる合唱の姿も変わっていったという。一人一人の歌のうまさよりも全体の完成度を重視していた時代から、歌い手の個性を生かした音楽をつくることが求められるようになった。平成は、音楽の分野でも価値観が変化した時代だった。

 それにもかかわらず、全国に深く柔らかな歌声を響かせてきた。定期演奏会などで歴代の指揮者が登壇すると、同じ作曲家の曲でも全く違う音楽を奏でるという。

 菅野さんを受け継いで2010年までの11年間にわたって指揮者を務め、今年4月から再び同校の指揮を執る星英一教諭は「指揮者の表現したい音楽を嗅ぎ取り、それ以上のものを返してくれる」と話す。

 「合唱王国」の伝統を守り続ける土壌も構築されている。県内の音楽を指導する教員を中心に活動する福島楽友協会合唱団は、指導法を学び合う絶好の舞台。また郡山市では毎年、小学生から大人まで全国大会で活躍した市内の音楽団体による演奏会を開催。昨年は13団体が出演するなど、全国レベルの歌声を身近に触れる機会をつくっている。

 「指導者も福島で合唱をすることが人生の中で大切な時間だったと感じているのでは」と菅野さん。コンクールでの活躍ばかりでなく、豊かな歌声を育て、後世に伝えていく指導者、歌い手たちの姿勢こそが、真の「音楽都市」「合唱王国」の姿だ。

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 郡山市音楽都市宣言 2008(平成20)年3月に議決された。「私たちは音楽を愛し 人と人が織りなすハーモニーを奏で 明るい笑顔が輝く 魅力あるまち"こおりやま"を創ります」とした上で「明日につなごうこころのハーモニー」と高らかに宣言している。

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 【平成20年の出来事】
1月・中国製食品や原料で食の安全を脅かす事件続く
8月・県発注工事談合・汚職事件で佐藤栄佐久元知事らに有罪判決
9月・甲子道路が開通
10月・伊佐須美神社で火災

 〔国内・海外〕▼福田首相が退陣、後任に麻生氏▼日本人4人がノーベル賞受賞▼米大統領にオバマ氏
 〔流行語〕「アラフォー」「ゲリラ豪雨」「あなたとは違うんです」
 〔ヒット曲〕GReeeeN『キセキ』アンジェラ・アキ『手紙~拝啓 十五の君へ~』青山テルマ『そばにいるね』