【平成23年】東日本大震災と原発事故 若い力でやり遂げた「高校総文」

2011(平成23)年に発生した東日本大震災、東京電力福島第1原発事故は、その後の本県を一変させた。避難生活や風評被害、放射線との闘い―。そこには、復興を信じて歩み続ける県民とそれを支える人たちの姿があった。震災後の「ふくしまの記憶」をたどる。
「開催できるか不安だった」。2011(平成23)年8月3~7日、本県での開催が決まっていた高校生の文化芸術活動の祭典「第35回全国高校総合文化祭(ふくしま総文)」。実行委員を務めた佐藤季(みのり)さん(25)=福島市=は、当時抱えた不安を鮮明に覚えている。
震災の凄惨(せいさん)さを伝える報道に「ふくしま総文どころではなく、福島がどうなってしまうか心配だった」。巨大地震、大津波、原発事故の類を見ない複合災害。新学期が始まってもふくしま総文の開催が見通せない中、事務局からアンケートが配られた。佐藤さんは用紙いっぱいに福島への思いを書き並べた。
「福島に生まれて、福島で育って、福島で働く。福島で結婚して、福島で子どもを産んで、福島で子どもを育てて、福島で孫を見て、福島でひ孫を見て、福島で最期を過ごす。それが私の夢なのです。あなたが福島を大好きになれば幸せです」と。
同年5月、佐藤雄平知事(当時)がふくしま総文の開催を正式に発表。「やりたい気持ちもあった。だけど(開催することで)福島に迷惑がかかるなら無理にやらなくていいとも思っていた」。心にかかった霧が一気に晴れた気がした。
地震で損壊したり、避難所になった会場も多く、実行委発足から約2年をかけて練った構想は大幅な変更を強いられた。開催中止になった部門もあったが「福島でできたことが何よりうれしかった」と佐藤さんは目を細める。佐藤さんが書いた「福島に生まれて―」で始まる言葉は、ふくしま総文の創作劇のせりふとして採用された。野田佳彦元首相の所信表明演説でも引用され、注目を集めた。
佐藤さんは現在、県内の小学校の教員を目指しており、「『福島で働く』から先はこれからです」と冗談交じりに話す。せりふを糧に、これからも「福島」で一つ一つの夢をかなえていくつもりだ。
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第35回全国高校総合文化祭(ふくしま総文) 「文化部のインターハイ」と呼ばれる、高校生による国内最大の文化の祭典。2009(平成21)年、本県での開催が正式決定。震災で本県開催が危ぶまれたが、県内8市22部門から6市町15部門に規模を縮小、部門によっては県外に場所を移し開催された。
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【平成23年の出来事】
3月・東日本大震災、東京電力福島第1原発事故
7月・会津で記録的豪雨災害、県人口200万人割れ
8月・本県で第35回全国高校総合文化祭(ふくしま総文)
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