【投資はじめました(1)】老後資金への不安 資産形成は若年期から

 

 「資産を運用してみませんか?」。昨年暮れ、金融機関に勤務する知人から誘いを受けた。単刀直入に運用状況を尋ねると、「私の場合は投資信託の運用利回りが64%。348万円を投資して572万円に増えました」と衝撃的な返答。そんなにうまい話はないと半信半疑だったが、気持ちが揺れ動いた。

 「あの問題があってから資産運用は注目されています」。あの問題とは一昨年6月に話題となった老後資金2000万円問題のことだ。金融庁審議会が95歳まで生きるには夫婦で約2000万円の蓄えが必要と試算した報告書をまとめたものの、批判を受けて撤回した。

 夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦が暮らす無職世帯の毎月のモデルケースでは年金などの収入が約21万円、生活費や家賃、医療費、娯楽費などの支出が約26万円と試算された。不足額が毎月約5万円以上となれば、老後の20年間で約1300万円、30年間で約2000万円の貯蓄を取り崩しながら生活しなければならない。

 この問題に端を発して老後の生活を支える公的年金への不安が高まった。「人生100年時代」を見据えた資産運用の動きも活発化している。個々のライフスタイルによって不足額は異なり、老後資金が不足しない場合もあり得る。だが、今後予想される寿命の延びや退職金、年金支給額の減少などを踏まえると、楽観視できない。

 今年で30歳。人口減少で地方経済は厳しさを増し、給料だけに頼るのは心もとない。昨年5月に生まれた長男の教育費などを考えると、将来に不安を感じる。知人からは「若いうちに始めることをお薦めします」と念押しのひと言。預金口座のある東邦銀行の窓口で相談の機会を設けてもらうことになった。(鈴木健人)