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 お産考える契機
【2】―2009.01.04
お産考える契機
今後の活動内容を話し合った「お産と地域医療を考える会津の会」=昨年12月27日、会津坂下町・坂下中央公民館
■産科医の集約 

  県内で出産を取り扱っている病院は昨年10月末時点で20病院。産婦人科医の集約化などで2006(平成18)年12月の調査から12病院減っている。一方、本県の産婦人科医は同年12月時点で142人。1996年から33人減少した。
今後の活動内容を話し合った「お産と地域医療を考える会津の会」=昨年12月27日、会津坂下町・坂下中央公民館 
第1部
医師と患者
 
― 診療休止 地域の問題 
 
 「もう一人医長はだめなんだって」。昨年12月末、降りしきる雪の中、坂下中央公民館(会津坂下町)に集まったのは、「お産と地域医療を考える会津の会」のメンバー。同町の千葉親子会長(61)は、産婦人科医1人態勢で50年間続いた坂下厚生総合病院の出産取り扱いが昨年1月に休止したことを、出席者とともに残念がった。
 同病院の産科休止の方針を知ったのは2007(平成19)年10月。病院に説明を求めると、県立大野病院で妊婦が死亡した出来事を引き合いに、医師派遣元の福島医大の医師集約方針を説明された。「病院も断腸の思いのはず。医師がもう1人来ない限り存続は難しいと、もっと早く気付くべきだった」と振り返る。
 昨年12月、同会を結成、会津地域の県立病院、厚生病院の産科の復活を求める署名活動を始めた。しかし実現がかなり難しいことを理解している。「産科医の絶対数が少ない。別の病院から医師を連れてきては、その病院に穴が開く。地域同士『医師よこせ』と言ってる場合じゃない」。医師不足を国全体の問題ととらえ、署名活動と合わせて不足解消を国に求めるよう、県議会に請願する方針だ。
 同会事務局長を務める三島町の五十嵐乃里枝さん(46)は署名活動を通し、お産を取り巻く危機への認識が、世代によって大きく違うことを実感した。「『子どもが少ないし騒いでもしょうがないのでは』と話す若い女性もいる。しかし何も声を上げないことが現状をもたらしたのだと思う」。地域の関心の高さをアピールすることが大事だと考える。
 この日は署名の提出時期や学習会の開催など、今後の活動方針を決める会議だったが、議論は多方面に及んだ。かつて子どもを産んだ際、助産師や医師に頼りきりだった経験、三島町などで少子化が急速に進んでいる状況−。
 「お産を総合的に考えないと意味がない。医師を求めるだけでなく、病院にかかる住民側の問題も指摘していかないと」と五十嵐さん。病院のお産取りやめは、お産の在り方そのものに対する地域住民への問題提起となっている。
 


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